鈴姫(すずひめ)


 鈴姫(すずひめ)は、何百年も経過した鈴が、命を持った付喪神……

 しかしこのモンスター地区では、まだまだ小娘。


 テラから惑星ヴィーンゴーヴルへ移住の時、鈴姫(すずひめ)は命を持ってから、それほど年月はたっていなかったのです。


 そもそも親が分からない鈴姫、物心ついたころには、それなりの少女になっていました。


 一人で生きてきた鈴姫、友達は一人もなく、寂しい生活に嫌気がさしていた時、偶然知り合った日本の阿波の妖怪、糸引き娘である三好糸女(いとじょ)のはからいで移住。


 糸女の元から学校へ通っていましたが、その糸女の勧めで、籠目(かごめ)高等女学校女専課程の、編入メイド任官課程を受験してみたのです。

 そして見事に合格……といってもぎりぎりではあったのですが……


 籠目(かごめ)高等女学校の、高女課程と女専課程のメイド任官課程の二十名の合格者は、入学式の一週間前に、タナトス・シティにあるホテルに集められ、徹底的に立ち振る舞いなどを教え込まれます。

 勿論、ルシファー様にお仕えするための覚悟など、娘さんには赤面するようなことばかり……


 そして一週間の初期研修が終わり、全員にメイド任官課程の高女課程と、女専課程の証である、イエローとピンクのシルバーリングが授けられたのです。


 惑星ヴィーンゴーヴルのモンスター地区の第一都市、タナトス・シティは快晴、鈴姫にとっても、その日は陰り一つない青春の幕開けでした。


 入学式には、新たにメイド任官課程の編入生も出席する決まり、すこし場違いな感じもしましたが、あっという間に終わり、クラス分けが決まります。

 鈴姫は二組となりました。


 籠目(かごめ)高女のクラス定員は一般課程二十五名、十組まであり、そこにメイド任官課程の生徒が振り分けられます。

 大体一目見て分かりますね……図抜けてお綺麗なのが、メイド任官課程の生徒ですから。


 当然、鈴姫もクラスの中では、光り輝いていると思われましたが、なかなかどうして、一般課程の生徒の中にも美女が結構いるのです。

 二組にも結構綺麗な方がちらほらと……それに高女課程からの、メイド任官課程生も一人いますしね。


 新しいクラスに振り分けられた生徒は、指定された教室に入りますが、入り口に数字札が入った箱が置いてあり、各自その中より一枚引くことになっていました。

 それが机の番号だそうです、机は三十個おいてあります。


 鈴姫は20番、四列目の前から二番目……その机がこれから一年、鈴姫の机なのです。


 隣の席、五列目前から二番目の、26番席の女の子が声をかけてきました。

「貴女……付喪神ね、私も琴の付喪神なの……仲良くしてくれない……私、琴音(ことね)というの……」


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