清庭
ritsuca
第0話
はるか昔のこと。
神は、孤独を持て余していた。あまりにも退屈していたから、どろどろの土を捏ねて人形を作った。
神が魂をほんの少し分け与えて作ったそれは、神と自分が全く違う生き物だと気づいた。
「この世界には、私と貴方しかいないんですね」
人形がぽつりと呟いた言葉に頷くと、神はもう一体、同様に人形を作った。
神と違う、けれど、神に似せて作られた人形たちは、やがて、神と訣別した。
これが、ヒトの始まり。
神と訣別した人々はまず、住む土地を探した。それまでいた神の住まう土地とは離れていて、けれども人々が住むことのできる環境の整った土地。
旅をして旅をして、やっと住む土地を見つけたときにはもう、手遅れだった。
生まれてくる子供たちの男女比は一:一。けれど、どちらの性も持たない子供たちがいた。全体の三割弱ほどだろうか。
神と暮らしていたうちの最後の一人とその孫が神のところに出向いて理由を問うと、
「私を退屈にさせた罰だ」
と神はにこやかに言い放った。
どちらの性も持たない子供たち――彼らは只人より遅いときの流れの中で生きる。
只人たちは畏れ敬う姿勢を見せたが、それはその実、彼らを自分たちとは別の生き物と見做し、距離を置いたのだった。
そしてまた、只人のうちのごく限られた人々は、彼らと交わり、彼らと共に生き、そして彼らを使役し、使役されるるようになった。
これは、忘れられ、隠された物語。
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