安納にむ

月曜日

 奇跡のような蝶だった。

 私が見つけたのは、今朝羽化したばかりのアゲハチョウ科の仲間である。アブラナの花畑でよく見られ、成虫は普通、黒いはねを持つ。

 だが、この蝶は違う。

 一見すれば、その翅は鉄のような光沢を放つ銀色に近い。ところがよく見ると、光の角度によって映る色は淡い黄、橙、青、紺と目まぐるしく変わり、それらと翅の先の尾状突起の朱が鮮やかなコントラストをつくる。

 翅を広げて飛ぶ姿は、まるで宙に小さな虹をかけているかのようだ。

 新種かと思ったが、身体の形を他と比較すると、どうやら同じ日に羽化した黒い蝶のメスらしい。

 趣味で蝶の観察を始めて数年になるが、同じ種類でここまで翅の色が異なるものは初めてだ。

 私はこのメスを、翅の色から"虹色"と名づけた。


 明日以降もここに通い、彼女の生態を記録することにしよう。

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