第191話 新たな住処を探す旅
「さて、どこへ行こうかな」
「ワウゥッ!」
村を出てリヴと合流した後、暗い森の中を歩きながら行き先についてどうするか、リヴと話し合いながら考える。手元には地図が無いので、行き先を考えても進むべき方向はわからないか。
リヴと一緒に歩きながら、空を見上げてみる。地面は真っ暗でも、空は月明かりで少し照らされているのでボンヤリと見える。そう言えば、商人から近くにあるという街の情報を聞いたことがあったかな。
まずは街を目指してみようか。でも、リヴが居るので人が集まる場所へ連れて行くと、他人を怖がらせてしまうかもしれない。
あれからかなり大きく育って、3メートルを超える巨大な獣に成長していたリヴ。モンスターと勘違いされて、人間たちから敵意を向けられたりするのは面倒だった。かといって、またリヴだけ置いて自分1人で街の中に入るというのもなぁ。
ということで、街や村など人々が住んでいるような場所に立ち寄るのは止めておくことにした。俺たちは人里離れた、どこか良さそうな土地を見つけて住処を創ろう。
「自分たちだけの場所を創ろうか、リヴ!」
「ワウッワウォワォッ!」
リヴも興奮しながら同意してくれている。俺たちが住むために最高に適した土地を見つけるための旅が、ここから始まった。
リヴと一緒に森を越え、山を超えて、人が寄り付かないような場所を探し出す旅が続いていた。
「リヴ、トドメを」
「ワウッ!」
「グルルルゥゥゥ!?」
道中、かなり凶暴なモンスターが襲いかかってくる。けれど、問題ない。あっさり蹴散らしながら、どんどん先へ進んでいく。
なるべく人の気配が無くて、強くて凶暴なモンスターが生息しているような場所を目指して。そんな場所なら、俺たち以外には近寄らないだろうから。
食料は、森の中で採取することが出来ていた。野草や木の実、果物など手に入れることが簡単なので、今のところ困ることもない。野生動物を狩って食料にすることも出来るので、村で生活していた頃より多くの食材を入手することが出来ていた。それを使って、美味しい料理を用意する。リヴと一緒に、美味しく食べた。そんな日々。
「もう、日が落ちてきたな」
「ワウ」
「じゃあ、今日はここを拠点にするか」
「ワウワウッ!」
暗くなる前に休息をとるための拠点を確保する。今日は、見晴らしの良い丘の上。どんな場所でも気持ちよく寝泊まりが出来る。過去に俺は、草原で暮らしていた人生も経験しているので、野宿なんて楽勝だった。むしろ、久しぶりで気持ちがいいな。空が広がって開放的で、清々しい気持ちになる。
簡易テントを立てて、焚き火台を作る。俺が拠点準備している間に、リヴが周囲の警戒をしてくれる。近くにモンスターが居るのを発見したら、駆除してくれていた。ちゃんと、俺とリヴとで役割分担がバッチリ出来ている。何の心配もない。
すぐに本日の拠点準備を完了すると、次は食事の準備。調理を始める。
「ほら、お前の分だ」
「ワウウウッ!」
道中で狩った野生動物の肉をアイテムボックスから取り出し、リヴに与える。
これはリヴが倒してゲットした肉なので、存分に自分の手柄を楽しんでもらおう。美味しそうに食べるのを横目で眺めながら、俺も自分の料理を用意する。
途中で採取した野草、野生動物の肉、アイテムボックスに保管してあった調味料を使って料理を仕上げていく。味付けは少しだけ。食材の旨味を生かすために、素材の味を生かしたシンプルな料理の出来上がり。
「うん。美味い!」
完成した料理を食べた。やはり、自然の中で食べる料理は格別に美味いと感じる。ぺろりと完食。もう大満足だった。
食事で十分に腹を満たした後。少し冷たい地面にゴロンと寝転んで、リヴと一緒に夜空を見上げて楽しんだ。
「ワウッ」
「お、流れ星か」
夜空に向かって吠えるリヴ。その先に、流れ星を見つけた。よく見えているなぁ。ゆっくりした後は、就寝。俺もリヴも、寝ている間もモンスターの気配を察知すれば飛び起きる事ができるから安心だ。
そして翌朝、気持ちよく目が覚める。ぐっすり眠って、体力も完全回復。
「おはよう、リヴ」
「ウワウッ!」
「さっさと荷物を片付けて、行くか」
「ワウッワウッ!」
そんな風にしてリヴと一緒にふたり旅を楽しんでいると、ようやく良さそうな土地を発見した。村を出発してから、1ヶ月ほど旅を続けた末に到着した俺たちの場所。
「ん! この辺り、なかなか良さそうなじゃないか?」
「ワウッワウッ!」
「おぉ! リヴも気に入ったか!」
周囲を探索してみると、近くに川と池を見つけた。水場の確保が容易。
立派な木が辺りに沢山ある。家や小屋を建てるのに適している。あれを伐採して、木材に出来そうだな。
近くに山もあって、あそこを掘ってみたら鉱石が手に入るかもしれない。金属とか見つけることが出来るかも。
周辺に生息しているモンスターも、そこそこの強さだ。訓練する相手に、ちょうど良さそうな敵もいる。
半径数十キロ圏内には、人が住んでいる村や街が無いのも確認した。深い森と山があって危険だから、ちょっと強いくらいの人間でも、ここまでは入ってこられない。
希望通り、人が寄り付かない場所だった。もしかすると、人類が今まで一度も足を踏み入れていないような土地なのかも。それぐらい、人の居た形跡が一切無い。
人類未踏の場所なんだとすれば、国にも縛られないような土地だ。俺たちが最初に踏み入れて、土地の所有権を主張できるのかも。まぁ、とにかく人間が来ないような場所だということ。
「じゃあ、ここに決定しようか! 今から、俺たちの住処を作っていこう」
「ワウッ!」
これからリヴと一緒に暮らすため、最高だと思われる場所を発見した。楽しかったリヴとの旅は、終わった。もう少し旅を続けたいという気持ちもあるが、ここまで。目的地に到着したから、次の目的へ。
改めて気合を入れて、次は新たな住処を創るために俺たちは動き始めた。
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