第35話 モテ勉強
もう一つ、俺には人生の目標がある。女性に慣れるということ。
しかし、女性との接し方についてどうやって勉強すればいいのだろうか。わからない。経験のない俺にとっては、全てが手探り状態。一人で悩んでいても解決するはずがない。誰かを参考にするべきだと思った。
そこで思いついたのが、族長であり、自分の父親でもあるタミム。まず彼の行動を観察してみることにした。
女性との接し方。どうやって、女性とスムーズに会話しているのか。
女性から好意を持たれるようにするには、どうしたらいいのか。
前の失敗のように、自分のパートナーが他の男性に目が行かないようにするには、どうするべきなのか。
毎晩のように違う女性を抱いているタミム。しかも、それで関係を持った女性達は揉めることもなく、親しそうに生活を続けている。そんな彼と周りに居る女性達との関係が参考になりそうだと思った。
どうやって彼は、その親しい関係を築いて維持しているのか。ジーッと日常生活の観察を続けて調べてみる。
タミムを観察した結果、判明した事がいくつかある。
まずは、いちばん大事そうだったのが感情を隠さず表に出すこと。子供のようにも見えるぐらいに喜怒哀楽を見せたほうが良いみたいだ。タミムの周りにいる女性は、彼の反応を見ていつも、明るく笑っているし、楽しそうだった。
裏表無く、気さくに見えるのが良いのかな。
そして、タミムが女性に興味を持って、色々と話を聞いているというような場面を何度も目撃した。ああやって、興味津々で話しかける必要があるのか。
興味を持たれて、女性も嬉しそうにしているし。
それから、やはり自分から積極的に女性に話しかける、というのが大事そうだな。無口だと、無愛想に思われるだろうからダメなのか。
女性の方から、話しかけてくれるのを待っていてはダメか。
タミム本人にも直接、相談してみた。
「なに? 女性に好かれる方法? それはやっぱり、強くなることだろうな」
「その他には? 何かある?」
質問に答えてくれた。戦闘部族として、強いことがモテる秘訣らしい。ここでは、それが一番大事なのかな。でも、それだけじゃないはず。さらに俺が聞いてみると、タミムは考え込んだ。しばらく考えてから、色々と答えてくれる。
「他ぁ? そうだなぁ……。毎日ちゃんと、女たちと顔を合わせることかな」
「そっか、それも大事なのかな」
観察していた時にも、タミムがこまめに女性達に会いに行く様子を見ていた。
単純接触効果とか、そんな名前の法則があると聞いたことがある。繰り返し何度も接すると、好意度や印象が高まるという効果。タミムは自然に得た知識から、それを実践しているようだ。こういう人を、本当のモテ男と言うのだろうなと俺は思った。色々と学ばせてもらう。
「あとは、いつもちゃんと体を綺麗にしておく。臭いと嫌われるからな」
「なるほど、ニオイか」
確かに臭いのは嫌かな。体はいつも、清潔に保つように心がけよう。ナジュラ族の中には、水浴びを面倒がって不潔に過ごしている人も多いから。彼らに影響されず、体はキレイにしておこう。
「お。なんだ、お前。好きな娘でも出来たのか?」
「いや、まだ好きな子は出来てないよ」
可愛いと思ったり、美人な女性だと感じる人はいるけれども。好きという感情には至っていない。だが、俺の答えを聞いて、タミムはニヤリと笑った。
「恥ずかしがってんのかぁ。でも、お前も、もうそんな年頃なのか、えぇ!」
盛り上がって、勝手に納得し始めるタニム。これは、何を言っても無駄だろうな。すると彼は、急に表情を真顔に戻した。
「いや、恋を覚えるのが早すぎないか?」
まだ3歳なので、たしかに恋愛なんて早すぎるか。でも、俺の6つ年上のシハブは好きな子ができて、守りたいと思っているようだし、恋愛に年齢は関係ないのかな。いや、流石に3歳は早すぎるだろうけど。自分でも思う。
「まぁ、何事も、早め早めに備えておくことが大事だしな」
「そうだよね」
俺もそう思うから、毎日のトレーニングを休まず続けて腕を磨いて、備えている。父も納得してくれたようなので、余計なことは言わないようにする。
「あと、俺には無いが、頭が良い男というのはモテるらしいぞ。帝国では、そういう男がモテると言われているらしいな。お前も勉強をして頭を良くしろ。そうすれば、俺なんかよりも、ずっとモテるようになるぞ。まぁ、頑張れ」
「わかった。ありがとう、父さん」
そう言って、俺の背中を叩いて激励してくれるタミム。そうか、ここにいる部族の女性達だけではなく、外にも沢山の女性が居るんだよな。そんなに焦る必要もないと、自分に言い聞かせる。そして、ちょっとずつ慣れていこうと思った。
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