「んんっ？これがエロ本かぁ？何だか武器とかモンスターの絵ばかりで、全然想像していたものとは違うなぁ〜？」

　パラパラとページをめくっていきますが、本に載っている人物は、武器を持ったカッコいい男性冒険者や杖を持った美しい女性冒険者が少しだけでした。そのほとんどが地図やらモンスターの強さ、武器やアイテムの値段や効果とエッサの期待していたものではありませんでした。

「あいやぁ〜、都では、こんなつまらない本がエロ本と呼ばれているのかぁ〜？はぁ〜〜、さっさと家さぁ帰って、飯でも食わんとなぁ〜。」

　さっきまで興奮していたのが嘘のように冷めていきます。パラパラと無感情でページをめくっていると、エッサの村の名前が出てきました。エッサは何気なく、ピィタと手を止めてしまいましたが、そこには見てはいけないものが載っていました。

「えっ？何故にオラの名前が本に載っているんだ？オラの家も、オラがいつもやっている事も、オラが好きな女子の事も！何故にこんなにオラの事が書かれているんだぁ〜？」

　ドキドキと再びエッサの鼓動は早くなっていきます。残念ながら額からは冷や汗を流し、先程とは逆に、体温がドンドン下がっていくような錯覚に襲われています。

「オラだけじゃなくて、村のみんなの名前がある。誰が何をするのかも、誰が何を隠しているのかも書かれている。もしや、これはエロ本じゃなくて、敵国のスパイが落とした極秘資料なんじゃないのかぁ〜！」

　エッサは急いで本を服の下に隠しました。キョロキョロと周囲を警戒しています。もしも、敵国のスパイに本を持っているのがバレてしまったら、口封じに殺されてしまいます。

　とりあえずは急いで家に戻らないと怪しまれるなぁ〜！と本来ならばこの時間にエッサは森の中にいません。家の中で飯を食べています。そもそも、森の中に入ったのも生まれて初めてです。

　突然、何故、今まで森の中に入らなかったのだろうとエッサは考えてしまいました。こんな事を考えるのは生まれてから初めてです。来る日も来る日も畑と家を往復するだけでした。それが普通で疑問に思う事など1度もありませんでした。

「もう少しだけ読んで見るべぇ。」

　エッサは服の下から本を取り出すと、地面に座り込んで、再び読み始めました。今度は焦らずに、じっくりと丁寧に読み始めます。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい