禁断のアイテム『攻略本』を拾った村人は、プロデューサーのシナリオを壊せるのだろうか?
アルビジア
第1章・村人編。
第1話・村人のエッサ。
『ザァク。ザァク。ザァク。』
いつもの場所で、いつもの時間に、いつものように村人のエッサは畑を耕しています。これからも、この先もずっ〜〜〜と、同じ生活が続きます。続くはずでした。
「あいやぁさぁ〜。そろそろ飯食いに家さぁ、戻らねぇ〜となぁ。」
なんだか昨日も同じ時間に、同じような事を言った気もしますが、そんな事よりも飯が大事です。鍬についた泥を叩き落として、手ぬぐいで綺麗に拭きます。先祖代々受け継がれているエッサ家の家宝です。
でも、父ちゃんから爺ちゃんの名前を一度も聞いた事がありません。父ちゃんも爺ちゃんの名前を知りません。他の村人も同じです。そんな事よりも家に帰る時間です。帰らないといけない時間です。
『トントントン。』とエッサは自分の腰を叩きます。疲れている訳ではありません。年齢もまだ18歳です。でも、叩かなければいけない気がするのです。今日も畑を鍬で耕すだけの仕事が終わりました。明日も同じように畑を耕すだけです。そして、いつの間にか野菜が出来ています。そんな不思議な畑が何処の村にもありました。
トコトコトコと、いつも綺麗な畦道を歩いて家に帰ります。誰が整備しているのか誰も知りません。壊れても数時間後には綺麗に直されています。村人の誰もが絶対神である『オーディン』様のおかげだと感謝しています。
この世界はオーディン様が作ったと王様から奴隷、モンスターまで、誰もが信じています。村人のエッサもそうでした。
トコトコトコ、トコトコ、ピィタとエッサが足を止めました。畦道の真ん中に分厚い本が落ちていました。
『キョロキョロキョロ?キョロキョロキョロ?』と周囲に人がいないか警戒します。村人のエッサも18歳とお年頃です。もしかしたら都だけで販売されている『エロ本』というアイテムかもしれません。誰にも見つからないように急いで本を拾って、服の下に隠しました。
(あいやぁ〜!とんでもないもん拾ってしまったぞー!)
エッサは心の中でドキドキしながら思っていました。何でも噂では『エロ本』というアイテムには、女の人のあんな姿やこんな姿が沢山載っているらしいです。エッサは家に帰るのも、飯の事も忘れて、村の近くに見える森の中に走って行きました。
「はぁはぁはぁ。見るどぉ〜!」と走った事で呼吸も荒いですが、興奮しているエッサには関係ありません。ゆっくりと本の表紙をめくりました。
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