第八話 共同戦線
前回のあらすじ
お喋りな
早速
石を拾いながらゆっくり歩いてきた行きと異なり、とにかく逃げの一手の全力疾走であった帰りは、早いものであった。
坑道の入り口までたどり着き、ようやく一息ついた一行は、どっと崩れ落ちるように倒れ伏した。
「やれやれ、あれじゃあちょっとやり方を考えなきゃいけないね」
「そもそもどうやって退治するつもりだったんです?」
「餌につられて群がってきたところを、あんたの魔法で一網打尽、ってのを繰り返そうかとね」
「成程……って、あの調子じゃ崩落しかねねえな」
「崩落、崩落ね……いっそみんなまとめて押しつぶされちまえば楽なんだけど」
とにかくいったん休憩しようと、ピオーチョは小型の炉のようなものに火をおこし、薬缶を火にかけた。この炉は
「ちょいと高いが、あたしら職人の手にかかりゃ簡単に作れるからね」
「へえ、じゃあ仕事が終わったら、俺達にも一つ作ってもらえます?」
「出来高制だよ」
「うへぇ」
薬缶で
「……というか、飲めんのか、そもそも」
『自分達、普通の飲食とは相性が悪いのでお気になさらずであります』
「ふん、石食い石に飲ませる茶はないよ」
『
坑道を出てもピオーチョとミノの険悪さはほぐれもしないようで、紙月もこれには参った。
「なあミノ、廃鉱山にはお前の仲間はどれくらいいるんだ?」
『現状、この廃鉱山内には、この自分を合わせて三十二の自分達がいるであります』
「結構いるな」
『でも自分達は何分石でできているだけあって
「そりゃ食ってくれって言ってるようなもんだしな……」
しかし、三十二というのは結構な数である。それもこの廃鉱山を棲み処にしているということは、素人の紙月たちがピオーチョの案内について行くより、よほど自由自在に動き回れることは間違いない。
「なあ、ピオーチョさん」
「嫌なもんは嫌だよ」
「そうは言ったってなあ……なあ、どうしてそんなに嫌がるんです」
「どうして? どうしてだって?」
ふん、とピオーチョは疲れとも苛立ちともとれぬ溜息を吐いて、それからゆっくりと
ピオーチョはこのミノの町で生まれ育った生粋のミノっ子だという。
やがて終わりが来るにしても、自分が死ぬ時までは精々このミノの町に尽くしたい。そう思って、
そのどちらともをまさかこの年になるまで続けるとは思わなかったけれどね、とピオーチョは笑った。
毎日のように山から掘り出されてくる鉱石やクズ石、精錬される金や銀、鉄、鉱山というのは
まだ十代の若造であるピオーチョは、それでも周囲の職人たちの仕事をよく学び、よく取り入れ、成人したてとしては随分取り上げてもらったものだという。
そのピオーチョが十六の頃である。
ピオーチョは一人の
その
勿論、その程度のことは子供たちの戯れとして、大人たちはとっくに気付いていただろう。その上で景気の好さから見逃されていたのだ。それでもピオーチョにとっては、それは胸が沸き立つようにドキドキする、特別な関係だった。
大人たちに黙って悪いことをしているんだという刺激に、
ピオーチョは
だからある日のこと、ピオーチョは小遣いをはたいて買った大振りの紅玉を
「だというのに、あいつは……!」
「うわぁ」
「うわぁ」
「
細工の得意な
『え、えーと、自分達も
「だからってもらったもん食うか!? その場で!? 宝石狂いの
『あうあう』
その瞬間、二人の間の友情は盛大に亀裂が走ったどころではなく完全に崩壊して喧嘩別れになったという。
「あれ以来、あたしは
これには二人もフォローのしようがなかった。
用語解説
・
甘みの強い植物性の花草茶。
同じ名称ではあるが何種類かの
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