第97話 美香との出会い(後編)

「ちょっと遠藤〜 あなたまだ友達いないんだって?」


「ぼっちってやつじゃん!」


「誰も相手にしてくれないのよね?」


『ははは』


俺は耳を立てて聞いていた。うん。これは完全ないじめだろう。名前は遠藤って言ってたっけ? しかも友達がいないとか。俺みたいなやつだな。


「・・・・・」


「ほらっ! なにか言ったらどう?」


「口ついてないの? 大丈夫?」


遠藤って子は何も言わない。さすがにかわいそうになってきた。俺はどうしたらいいんだ? 黙って出ていくのはおかしいし、このまま帰るのもあの子が可愛いそうだ。よし! ここは勇気を出して・・・


「おいおい。お前らちょっといい過ぎだろ」


俺は間に入って、勢いで言った。どうせ嫌われたってどうでもいい。少しでも人の役に立ってやる。

一瞬の沈黙・・・ そして、


「はぁ?お前誰?」


「なんか超ダサいんですけど?」


「もしかしてぼっちの人?」


3人の矛先が俺に向いた。まぁ・・・ そうなるわな。しかし俺はこんなことじゃあひるまない。


「だ・か・ら・・・ 言い過ぎだっつってんだよ! 寄ってたかって1人をいじめやがって・・・ お前らがそういうことしてるから悲しむ人も増えるんだよ。お前ら耳ないのか? 単細胞共が!」


俺は相当腹が立っていたのか、最後には怒鳴りちらしていた。


「い、いや・・・ そんなつもりじゃないし」


「てかお前誰よ?」


何って言われても・・・ この前見かけただけだし。まぁそれでもこのフレーズがこの場にはふさわしいだろう。


「俺は・・・ その子の友達だ!!!」


みんなが目を見張って俺を見た。あの遠藤って子も驚きの目でゆっくりとこっちを向いた。


「ふん💢 みんな。もう行こ!」


「遠藤とつるむなんてろくなやつじゃねえな」


「あなたも後悔するのね」


散々罵倒されて去っていった。さすがにあそこまで言われると俺も辛いが・・・ まぁあの子が無事でよかった。


「・・・だ、大丈夫か?」


「・・・・・」


・・・だよな。急に友達なんて言われても。実際、俺とこの子はほぼ初対面だしな。


「・・・なんで私を助けたの?」


「え? え〜っと、それは・・・」


なんでって言われてもなぁ。かわいそうだったし。それに・・・


「それは・・・ 君が俺に似ていたから。俺みたいに友達がいなかったから。俺も友達作るの苦手で・・・ それで悩んでいて、君を見つけたんだ」


「・・・・・」


俺たちは沈黙した。ただただ風の音がするだけだ。時間だけが過ぎてゆく。


「あ、あの・・・」


「あなたの名前は?」


沈黙を破るように向こうから質問してきた。


「あ、ああ。俺は赤坂快斗。快斗だ」


「そう。快斗かぁ・・・ ありがとね❤️ 快斗❣️」


「お、おう・・・」


なんだ。笑えるんじゃないか。笑った顔もすごく可愛いし💕 そっちの方が似合ってるな。


「私は遠藤美香。美香って呼んでね」


「ああ。よろしくな。美香」


「それで・・・」


美香が深呼吸してから言う。


「私たちは・・・・・ 友達?」


そんなこと・・・ 聞かれなくても答えは決まっている。


「もちろんだ!」


俺と美香は声をそろえて言う。


『今日からず〜っと友達だ!』











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