第87話 12年前の記憶(前編)

これは12年前のある日・・

俺の両親がどちらもいて、あかりと出会う前の話だ。


「か〜いとくん❣️ あそびましょ❤️!」


当時はまだ4歳の俺、赤坂快斗と雪村結衣。俺たちは家は離れていたが、とても仲がよかった。


「ゆいちゃんは元気だね?」


「あったりまえでしょ? かいとくんとあそべるんだもん💕!」


なんて会話を毎日していた。まぁこの時に俺には恋愛感情なんかあるわけがなく、ふつうに友達だった。結衣がどう思っていたのかは知らないが・・

時には結衣のお母さんが呼びにきた。


「結衣! 早く帰ってきなさい!」


「ママ? もうちょっとだけ〜!」


「だめよ! 今日はお父様が帰ってくるでしょう」


「・・は〜い」


考えてみれば、結衣のお母さんにもこの時に会っていたような気がする。


「じゃあかいとくん! またね❤️!」


「おう。げんきでな!」


当時の結衣は今じゃ考えられないほど破天荒だった。当然親も苦労しただろう。でも俺はそんな結衣が好きだった。

何はともあれ、こんな平和な日常がずっと続くと思っていた。のに・・


「ゆ、ゆいちゃんを離せ・・!」


俺と結衣はある公園で遊んでいたのだが、2人のチンピラに絡まれてしまった。


「けけけ〜 こいつは4歳にしては上玉だぜ〜」


「か、かいとくん・・ たすけて!」


「はあ〜 可愛いでちゅね〜 ははは〜」


く、くそ・・ 俺にはどうすることもできない・・ あんなに結衣が苦しんでいるのに・・ 俺は悔しくて涙が止まらなかった。

そして俺は覚悟を決めて・・


「俺の・・ 俺の・・ ゆいちゃんに手を出すんじゃねぇ〜!」


俺は無我夢中でチンピラたちを叩いて、蹴って、引っかきまくった。でも大人は強い・・


「ああん💢? なんだこいつ?」


「へん💢 かっこつけやがって・・ やっちまおうぜ!」


「うっ・・・」


「か、かいとくん!」


俺はたちまち蹴飛ばされた。やはり体格の差はどうにもならない・・ これは万事休すだ。


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