3.冬眠じゃない

ライラックいろの小瓶を空にした今日は子猫がきいろにみえる



ふいに、みた。歩道橋へと駆けだした。虹のふもとにゴンドウがいた。



鰯雲さえも知らない鯉のぼり家族は未だ ひとりたゆたう





しずけさやアクアリウムに蝉時雨ふるがみゆれば戦跡かな



三次元せかいはセイに閉ざされた

鳴けないんなら光れ啞蟬


黒南風が白いカモメをひっつかみ高層ビルを

貝塚にする



ほころびは黄金いろの幕引きはアリス・リデルの八月二十日





遠雷が産まれた 僕は聞いていた そして縮んで しんでしまった





極月になるまで踊ろ ゆきとけて またつもるまでひとりで踊ろ



恋なんて知らない冬の水族館ポリプは僕だえいえんに僕

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