第7話 期末試験の前哨戦①

さて、どうしたものか。期末試験まであと1ヶ月だったとは。完全にまだ2ヶ月あると思っていた。


「ほ、ほら、あと1ヶ月とは言っても、頑張って勉強すれば大丈夫だよ!きっと...。」


緒方が励ましてくれる。だが、最後の自信なさげな「きっと...。」の部分でさらに不安感が増した。


期末試験の話をしていると、先生が教室に入ってきた。朝のSHRの時間だ。


「みんな、おはよう!特に連絡事項はないが、この後1時間目のLHRの時間に冬休み課題テスト返すからなー。それじゃあ、今日も一日元気にいこう!」


先生の短い挨拶が終わる。ここで初めて冬休み課題テストが返却されることを知った。以前にも言ったが、今回のテストは恐らく散々な結果だ。いつかは返ってくるものではあるが、せめて直前に返すと知らせるのはやめて欲しいものだ。心の準備が出来ていない。そして、SHRの時間も終わり、1時間目となる。


「よし、さっきも言ったが、テスト返していくぞ!で、今回のテストなんだが、割と簡単めに作ったんだがなぁ...。案外、平均点が低かった...。てことで、急遽全教科60点に満たなかった者に対して再試験を行うことにした。再試験は1週間後の1月18日に行う。今回の試験内容は、期末試験の範囲にも入ってくるから60点未満だった者はしっかりと復習して、再試験に臨むように!それじゃ、返していくぞー!」


名簿1番の人から順に呼ばれ結果を受け取っていく。俺も名前を呼ばれ、結果を受け取りにいく。恐る恐る結果を見る。点数は、国・数・英・社・理の順に42・38・52・26・34だった。英語が半分なのは、予想通りだったが国・数・理において赤点を回避したのは意外だった。だとしても、全教科60点未満だったから結局、全教科再試験だ。


「小林くん、どうだった?」


緒方が聞いてくる。俺は慌てて結果が書かれてる面を下にして机に紙を伏せた。


「えっ?えっ、えっと...。まぁまぁ...かな?」


「どれどれ?これのどこがまぁまぁなの?全教科再試験じゃん。」


楠木さんが俺の結果用紙を見ながら言う。


「ちょちょちょ〜!み、見ないでくれ...!」


「小林君、さっきのShooting Starの意味といい、期末試験大丈夫?」


天王寺さんが、心配そうに聞いてくる。正直言ってヤバい。十中八九どころか、十中十でヤバい。自他共に認める。これはヤバい。今回のこの試験の範囲は期末試験にも直結するから、ここで60点未満だったのはかなりきつい。


俺は、今回の期末試験で全教科赤点回避しないと進級はかなり危ういだろう。この課題テストと期末試験が同じレベルの問題であれば、割とすんなり赤点回避出来るとは思うが、期末試験は確実に今回より難易度は上がる。そうなると、早急に対策を練る必要がある。どうすればいいのだろうか。


「あ、そういえば皆さんは何点だったんですか?」


「あんまり、聞かない方がいいとは思うけど」


まとめると、天王寺さんが、96・87・89・91・83、楠木さんが、84・97・88・86・90、緒方が、80・92・85・83・97、武田さんが、91・82・95・86・84、久保田さんが、85・84・91・96・86だった。


「・・・。いやっ、頭良っ!!!」


5人の結果を聞いて俺はあることをふと思いついた。バンド見学もこの席になったのも何かの縁!この5人に勉強を教えてもらえばいいのではないか。俺は、素直に頭を下げて人にものを頼むのはあまり好まないが、背に腹はかえられない。俺はプライドを捨てて5人に頼んだ。


「5人に頼みがある!俺に勉強を教えてくれ!」


「人にものを頼むときは"〜してくれ"じゃなくて、なんて言うのかなぁ?」


楠木さんはニヤニヤしながら俺に聞いてくる。さてはこの人、ドSだな。とか思いながらも渋々、再度頭を下げた。


「俺に勉強を教えてください。お願いします!」


「もちろんです!せっかくアニメ好きの友達が出来たのに、留年しちゃうなんて嫌ですから!」


緒方はすぐにオッケーをくれた。


「しょうがない。困ってる人を放っておくのは趣味じゃないし。教えてあげるよ。」


続いて楠木さんもオッケーをくれた。そして、武田さんと久保田さんもオッケーと言ってくれた。しかし、天王寺さんだけが渋い顔をしている。


「あっ、あの...迷惑だったら断ってもらってもいいんで...。」


「いえ、断る気はないんだけど...。ただ、一つだけ条件があるの。」


「なんですか?出来ることならなんでも。」


「私たちのバンドの...プロデューサーになって欲しいの。」


(・・・。えぇーーーっ!?)





第8話 「期末試験の前哨戦②」に続く。

次回更新は2月26日(水)の予定です。

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