第6話 期末試験まであと何日?

翌日。俺は教室に入る。すると、俺に気づいた緒方は手を振りながら挨拶をしてくる。


「あっ!小林くん、おはよー!」


「おはよ...。昨日は、ありがと...。すごく楽しかったよ...。」


眠い目を擦りながら俺は返事をする。


「眠そうだねー。どうしたの?」


「いや、昨日帰ってからも余韻がすごくて、ライブのブルーレイ観てたら朝の3時になっちゃってて...。あんまり寝れなかったんだ...。」


「あはは・・・。あんまり、夜更かししたら体調崩すから気をつけてよ?」


「あぁ、そうだな。今日は、ゲームやったらすぐに寝ることにするよ。」


俺が緒方と話していると、教室の扉が開き、誰かが入ってきた。俺と緒方は扉の方を見る。


「おっ、みんな!おはよー!」


緒方以外のバンドメンバー4人が一気にやって来た。


「お、おはようございます...!昨日は、ありがとうございました...!」


「おはよ!こちらこそ、来てくれてありがとね。」


天王寺さんが、頭を下げてお礼を言ってきた。それにつられて、俺もいえいえと頭をさげる。そんなやり取りがあり、4人のバンドメンバーは俺の前後、斜め前と斜め後ろの席に座った。


「えっ?」


つい声に出してしまった。


「ん?どうかした?」


他の4人のメンバーは不思議そうに聞いてくる。


なんと、驚いたことに俺の周りを囲む5つの席。そこに座るのは、昨日、俺が見学にいったバンドメンバー5人だった。こんな偶然あるのだろうか。あるとしてもすごい確率なのではないだろうか。


「いえ、まさかメンバーの皆さんが、俺の周りの席だとは思っていなかったので...。」


「確かに、こうも固まるなんてすごい確率だよね!」


正直、席の配置どころか同じクラスだったことにも驚きだ。ここで、俺の頭の中に昨日の緒方の言葉がフラッシュバックしてくる。メンバーを紹介してもらった時の言葉だ。緒方は、「名前は知ってるか。」と言っていた。そして、バンドメンバーは同じクラスの友達で組んだとも言っていた。そうか。同じクラスだから流石に名前は知ってると思ったのだろう。だが、残念。俺は、クラスの男子の名前は覚えているが、女子の名前はほとんど覚えていない。なぜなら、関わる機会があまりにも少ないから。しかし、このことは5人には黙っておこう。


「そういえば、昨日から気になってたんだけど、バンド名の"Shooting Star"って"星を撃つ"って意味?」


俺は首を傾げながら尋ねる。


「違うよぉ〜w "流れ星"って意味!ちょっと前に授業で習ったでしょ?」


緒方は笑いながら言う。


「あはは、、、そういえば、そうだった!流れ星だ、流れ星!忘れてたよ!」


俺も笑って誤魔化す。危ない、危ない。俺のバカがバレてしまう所だった。


「小林君って、もしかしてバカなの?」


バッ、バレて...た...だと!?あの完璧な演技のどこでバレたんだ?


「こ〜らっ!唯、ほぼ初対面の人に"バカなの"は言い過ぎだよ?せめて、"お勉強ができないの"くらいにしときなよ。」


武田さんが、楠木さんの頭に優しくチョップを入れる。


うん。それはそれで結構傷つくかもしれない。


「ところでさ、小林くん...。期末試験、大丈夫?」


心配そうな顔で緒方が聞いてくる。


「大丈夫だって!まだ、冬休み明けたばっかりだから、まだ2ヶ月はあるだろ?」


俺の学校では、冬休みが明け、約2ヶ月後の3月の初めの方で期末試験が行われる。それだけの時間もあれば、授業もかなり進むはずである。だから、まだ焦らなくてもいい。


しかし、俺が大丈夫宣言をすると5人は何か言いたそうだった。すると、天王寺さんが、口を開く。


「小林君...。とても言いづらいんだけど...今年から2年生の職業体験発表会が3月上旬にある影響で、期末試験が早まったんだよ。」


「えっ...?」


俺はスマホのカレンダーアプリを開く。俺は、4月に学校から年間予定表が配られた段階で試験や模試、学校行事などの予定をアプリにメモしている。そこにはしっかり、2月7日と10日の部分に期末試験と書かれていた。


待ってくれ。今日は、1月9日。期末試験まで約1ヶ月しかない。


「あと...1ヶ月...。」


俺の顔はこれまでにないくらい焦りで満ちていただろう。


「これ...マジでやばいな...。」





第7話 「期末試験の前哨戦①」に続く。

次回更新は2月23日(日)の予定です。


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