第2話 冬休み明けの地獄①

今日は1月8日。元日から1週間が経った。

あの地獄のような"悪夢"からもう1週間も経ったのかと思うと少しは気が楽になる。しかし、今日は冬休み明け初登校日。少しは気が楽になったかと思われたが、そんなことはなかった。冬休みが終わってしまい残念な気持ちはある。だが、気に病んでいるのはそこではない。気が楽にならない原因。それは冬休み明け課題テストである。


俺の通っている高校では、冬休み明け初日に課題テストがある。通常の定期試験では、いくつかの科目のテストを2〜3日かけて、午前中のみで行われる(午後の授業はない)。だから、勉強できる時間も増えるので負担は軽い。だが、この課題テストでは5科目を1日で行う。つまり、定期試験に比べると圧倒的に負担が重いのである。しかも、今年の年明け以降はいつにも増してヲタ活が忙しかった。その為、十分に勉強できていない。いや、ほぼしていないという方が正解に近いのかもしれない。そんな状態でテストをしても結果は目に見えている。だから俺は学校に到着し、朝30分くらい時間があってもあえてテスト勉強はしない。これがいわゆる"負の余裕"ってやつなのだろう。


そして、テストの時間がやってきた。この時ほど、時を止める能力が欲しいと思った瞬間はないだろう。だが、どう足掻いても逃げることはできない。こうして、課題テストは始まった。


1時間目は数学。数学は割と得意だった。過去形だ。今は違う。ベクトルの応用がどうとかよくわからないことを問われる。しかしながら、俺はだいぶ余裕の表情をしていた。教科書の基本的な問題はほとんどできるようにしたから、赤点を免れる自信があった。しかし、問題を解いていくうちにその自信はどこかへ消えてしまった。基本的な問題しかやらなかったので、最初の数問しか解けずに終わった。見た感じだと、20点代といったところ。よって、赤点確定だ。


2時間目は社会。俺の最も苦手な科目だ。気候がどうとか、この事件がどうとか、それ知ってて役に立つの?ってことばかり暗記させられる。といった感じで、教科書をサッと1回読んだだけだ。よって、赤点確定だ。


3時間目は国語。現代文は意外といける。古典と漢文は壊滅的だ。文法とか、古文・漢文なんて読めてなんの役に立つの?ってことをやらされる。だから、勉強していない。そもそも、国語は勉強の仕方がわからず、漢字しか覚えていない。よって、赤点確定だ。


4時間目は理科。将来、学者になりたい訳ではやいので、気体定数とか元素の物質量とか知っててなんの役に立つの?ってことを覚えなきゃならない。だから、覚えようといていない。ノー勉なのである。よって、赤点確定だ。


5時間目は英語。最終科目だ。こちらは、苦手だった。過去形だ。今は違う。だいぶ克服してきている。今までは赤点だったが、大体半分くらいは解けるようになった。見た感じ、今回も50点くらいだろう。


結局、テストは5科目中4科目が赤点で確定だろう。しかし!5時間のテストは終わり、6時間目はHR(ホームルーム)だ。恐らく、課題を回収したりってことだろうからダラダラと過ごせばいい。そうすれば、帰ることができる。こうして、冬休み明けの地獄も終わったと思い、んーっ!と伸びをした。今、気はすごく楽だ。


そう思ったのもつかの間。課題回収を終えた担任が放った一言によって俺はまた気が重くなった。


「よし!冬休みも明けたし、そろそろ席がえでもするか!」


「えーーーーーっっっ!!!」


「おい、どうした?小林。いきなり大きな声を出して。」


先生に声をかけられ我に返ると、全クラスメイトが俺の方を見ていた。


「あっ、すいません。何でもないです。」


少し慌てたような声で話す。


(まさか、声に出てたとは...)


あまりに急なことだったので、つい心の声が漏れてしまっていた。気をつけなければ。


課題テストが終わり、安堵していた。油断していた。冬休み明けの地獄が終わったかと思ったのもつかの間。更なる地獄が待っていた。




第3話 「冬休み明けの地獄②」 に続く。

次回更新は1月12日(日)の予定です。




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