旧町長の子孫
今日は弥生と街に出て武器屋に行くことになった。なんでも、武器屋のルナルドは弥生が街の平和のために戦ってくれているから武器の修繕や調達のためにお金を貰ってないらしい。弥生はいつの間にかルナルドに新人の仲間が出来たからピッタリの弓矢をよろしく頼むと手紙を送っていたらしい。久しぶりに昼間の街に戻ってきて、レニアンに挨拶がしたいと言い連れていってもらった。レニアンはあたしのことを覚えていて、まさか魔獣退治をしているとは思ってもいなかったらしく、怪我をした時はいつでも来てねと言ってくれた。
レニアンに別れを告げ、ルナルドのいる武器屋に向かった。驚いたことに、ルナルドはなんの動物かわからない…なんだ、この間抜け面にへにゃへにゃの耳は…。
「やぁ!君が弥生の言ってた新人くんだよね!僕はルナルドだよ、動物族のみんなにもなんの動物か分からないってよく言われるけど、モルモットなんだ!よろしくね!」
なるほど、モルモットか。たしかにモルモットはこんな間抜け面だった気がする。ルナルドはちょっと待っててと、ホットミルクを出してくれて奥の方へ行ってしまった。ゲームでしか見たことないような武器が沢山かけられた壁を眺めているとルナルドが戻ってきて、真紅と言うに等しい、とても綺麗な弓を持ってきた。なんでもこれは普通に買えるような代物ではないようで、扱いも難しく訓練が必要だが、扱えるようになると一撃で魔獣を仕留めることが出来るらしい。
「ルナルド、ありがとう。これで羅美も扱いに慣れれば最強の弓使いになれると思う。私の使っている弓を使わせていたが、なかなかに覚えがいいし技術もある。」
そんなことを言われるとは思っていなくて照れくさかったが、素直に嬉しかった。
それからは真紅の弓の扱いに慣れるために日々特訓した。3ヶ月程して、ふと気がついた事がある。この弓、神経を集中させると身体と一体化したような感覚になり、的確に的の中心を当てることが出来るようになってきた。あたしはコイツに名前を付けることにした。
「レッドストロング、よろしくな。」
ある日街に買い出しに行った時、青年に声をかけられた。魔獣退治をしてる2人組とは君たちのことかい?と。そうだと言うと、ついてきて欲しい所があると言われ、弥生と2人でついていくとそこは旧町長の居た役場だった。
「俺はヤナリー・カルド、タリニヤ・カルドの子孫だ。単刀直入に言う、魔獣退治をしてもなんの意味もない。先祖が魔獣と交わした契約は強く、その魔女も強力だ。無理がある。」
弥生は鼻で笑った、無理だと言い切るならお前がやって見せてみろ。私達は今日まで何百体と魔獣を倒してる。魔女の住処もわかっている。お前は魔女と交わした契約を破ることで子孫である自分に災難が降り注ぐことを恐れているだけだろう、と。ヤナリーはそんな訳じゃないというが、図星だったのだろう。目が泳いでいる。
「行くぞ羅美、こんな弱虫と話していても無駄だ。街が平和になることを願ってる人達は沢山いる。こんな1人の弱音に揺るがされるな。」
揺るがされることは無かった。ヤナリーは確かに自分が子孫であるから魔女から呪いでも受けるのだろうと恐怖してるだけだと分かっていたから。しかし最近は、夜の街に出てくる魔獣の数が増えている気がする。繁殖期でもあるのだろうか?弥生と買い物を済まし、カブに乗って弥生とあたしの住処に帰ったが、帰りしなにみんなが手を振ってくれた。それはとても嬉しい事だが、カブという、原付というこの世界にあるわけのないものが走ってることに違和感を感じないのだろうか?
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