光源

きし あきら

令和元年十二月三十一日

 昨日さくじつから来客つづき、にぎやかな年の瀬。

 昼すぎて、ひと息つく。鍋でぬくめた牛乳。つくり置きの菓子。窓のそとは晴れの青。ひとの声がしなくなれば、勢いのよい風の音が台所に響く。

 冬のあおぞら。まだ新しい、笑いごえの記憶。風のごうごう。窓、壁、天井に、それらがじゅんり、順繰りする。


 日の陰らないうちに散歩。おとろえない風ども、村の大掃除でもしてるのか。これだけ吹けば全戸、屋根のすみまで清められよう。


 細い水路にしたがって西へ。そこらに乾きはてた数珠じゅずだまが群れている。ひとつ穂を手折って、指さきで遊びながら歩く。

 西のきわまでゆくと、つかれた黄いろの葉が絶え間なく落ちてくる。これは氏神うじがみさんの蝋梅ろうばいつぼみは枝のさきからほころびはじめたばかり。

 落ちる葉と一緒になって、かさかさいうのは紙垂しで。そういえば数珠玉の穂も、耳もとで揺すると同じに鳴る。


 暮れどき。山は日照を隠してしまいながら、きょうの明るさを惜しげに、こずえに引っかけている。あとを追う月だけが、はやばやと身を光らせて白い。

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