明日

 自宅に帰ると、秋田はいなくなっていた。

 コタツの上には、一枚の紙きれと、重しに置かれた缶コーヒー。

 紙面には、数行の文章が走り書きで残されている。


 僕はその紙きれを読まずに丸めて、ゴミ箱に放った。縁を掠めて、入らずに落ちた。

 コートも脱がずに、白い壁に寄りかかったまま座り、缶コーヒーの側面を見る。微糖。

 プルタブを開けて、口につけた。


 苦い。とても不味い。

 内側から凍えるほど、冷たかった。


 缶を片手に、ゴミ箱から零れた紙屑を眺める。

 秋田の言葉。

 僕らは、どうやって生きていけばいいんだろう。

 抽象的で、馬鹿馬鹿しい問いだった。

 答えなんて、決まりきっている。


 なにがあろうと、どれだけ辛く悲しいことがあったとしても。

 僕らは、この現実の世界の中で。

 ただ生きていくしかないんだろう。



 そう、僕らは薄命世代。

 誰よりもガラスの心で。

 誰よりも死に近い。


 僕らは薄命世代。

 生きることに不器用で。

 不毛な足掻きを続けるだけ。 


 所詮、僕らは薄命世代。

 明日には誰かが死んで。

 明日には、僕らがいるのだろう。

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