雪原に帰す
雪の沙漠を巨人が通る。世界の終わりを運ぶ巨人と呼ばれるが、彼は歩いているだけだ。世界の終わりだとか、明日の暮れだとか、あまり考えていないのだ。朝日で照らされた雪原の煌めきを黄色い花かと思って詰んでみたり、森が震え雪の帽子を脱ぐのに混ざって座り込んだり、地吹雪に隠れるつむじ風を掬い上げたりと、気ままに遊んでいる。それが小さき木々や人々にとっては、吹雪となり雪崩となる。白い塊が頭を殴る。村は根こそぎ持って行かれる有様で、巨人の一挙一動を見守り、振り下ろされる手は天罰と、もみくちゃになりながら受け入れた。花を摘もうとかざされた手により、生き物は一息に潰れる。家も森も。
何の罰かを人は知らないが、災いではなかった。巨人の歩にあわせて人は生活の場所を変える。避けられなければそこでお終い。巨大な隣人がいる。やすやすと地を裂き、煎餅を割る怠惰な気分で空を落とす。粉微塵。雪が舞う。空より大きな子供の戯れ。成体を見た者はいるだろうか。大人になれば、巨人だって雪の原で遊びはしないのだろう。遥か高空で遊泳をたのしんでいるのかもしれない。
山を掬い上げ、天に捧げ、噴火させてばら撒いた。星が降るのだ。大量の星が。雪が肺を満たすのだ。星の終わりは白く霞む。
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