散桜



サクラの花ビラが散っている。

もう散りかけのサクラだ。


桜の花びらが散って、舞い上がっている。

旋風に巻かれて、

桜が散る。桜が舞う。


息もできないほどに散る桜。


広い通りの桜並木。


そこに5人の制服がいる。

学生服。学ランとセーラー服。

黒と紺と白。


笑う。はしゃぐ。走る。仰ぐ。跳ねる。着地する。

話す。じゃれ合う。


笑っている桜の下の人数は合わない。

一人の黒を、四人の紺が白い襟で取り囲んでいる。


笑いは尽きない。幸せも尽きない。

それでもなぜか満ち足りない。


桜は、その薄い桃色で始まりを告げて、終わりを予告して散って逝く。


散る桜。

散桜ちざくら


それは血のように鮮やかに流れて桜吹雪の川となって遺していく。


始まった桜の風。

舞い落ちてくる桜の雨。

どこにいても出会いと別れはやって来る。


それは鮮やかな桜の色で告げて、

儚い桜の旋風によって思い知らされる。


期待していた未来と過去。

もう後戻りもできない現在。


それを咲き誇る桜の下にいる彼女たちは気付けない。

気付けないまま笑い。

気付けないまま泣く。


そんな未来が待ち受けているかも知れない残虐。


それを桜の色は教えてくれているのかもしれないのに、

無邪気な子供たちは……それでも未来は無事なものだと信じていた。


そんな時に、彼らを裏切るのは桜色の世界。

あっけなく、簡単に、

期待していた未来とはかけ離れた現実を突きつける世界の桜は出逢いと別れを。


また桜の咲くころに、彼らたちは身をもって知るのだろうか?

いま、目の前にいる恋しい理想の人間が突然と消えて、

いま、どこにいるのかも分からない妥協な運命と結ばれるという非情を。


しかし、

ただそれを怖れ恐がる独りが一人。

彼女たちの中心で悟っていた。


二人目……それは桜にうり二つの桃色に囲まれている。


桃色は百色。


それが……まだ未成な彼と彼女たちに訪れる、運命の色。


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