砂漠に1人と1匹

理系スナネコ

第一章 砂漠の中で

初日 「大きな砂嵐」

広大な礫砂漠を5人は車に乗り移動していた。

その5人は板見班と名乗り世界のあちらこちらを思い出作りのために探検していた。


「やっぱり広いな〜」


班員の1人である、面長で常時寝ぼけ眼のような顔の東郷瑛一とうごうえいいちが言った。


「そりゃ砂漠なんだ、周りに何も無いからそう見えるだろうな」


と運転しながら班長である板見が返した。

名前の通り板見班の班長である板見優いたみゆうは頭脳明晰で温厚であり判断力にも長けていたので、他の班員からも慕われていた。


「広大なように見えても地球規模で見ればちっぽけな砂漠ですからね。確か3,000km²ぐらいでしたっけ?」


そう付け加えたのは板見班唯一の女性、砂糖八重さとうやえである。


「正確には2,956.653km²ね」


「なんで和馬はそんなに詳しく覚えていられるのさ…」


得意げに遠藤和馬えんどうかずまはいい、それに呆れ顔になりながら八田龍はったりゅうが言う。

「和馬くんは数字覚えるの好きだもんね」


砂糖が笑いながらそう言った。


普段と変わらぬ板見班の探検風景がそこにはあった。

だが、直ぐにこの時間が終わりを告げようとしていたなどこの時はまだ、誰も知る由はなかった。


……


その後奇妙な形のサボテンを撮影したり、砂漠でしか見られない生物を観察したりしながら砂漠を、走り続けていた。

だが…

キィィィィィッ…

車がブレーキ音をたてて停まった。


「班長、どうしたんですか」


砂糖が問う。


「おい、あれ見ろ…大きな砂嵐だ…」


「おぉ…」


八田はそう声を漏らしながら写真にそれを収めた。


「馬鹿!感心して写真撮ってる場合か!直ぐにここから離れるぞ!」


そんな八田に板見は怒り、直ぐにアクセルを踏んだ。

だが、タイヤが空回りする音がして車は動く素振りを見せなかった。


「班長…?」


遠藤が不安そうに訊く。


「タイヤがハマっちまった……」


「えぇ!?」


走っているうちに砂砂漠へと入った車は砂にタイヤを取られて抜け出せなくなっていた。


「俺たち全員で後ろから押すぞ」


班員の4人は無言で頷き車から出た。

そして、4人に後ろから押してもらいながら板見は1人車内に残り、ハンドルを握り直してアクセル全開にした。

暫くして…

ゴォッという音ともにそこから車は抜け出した。

「直ぐに車に乗れ!!」

板見は窓から顔を出し4人にそう言った。

だが…


ビュォォォォォォ……


時既に遅かった。

車と4人は砂嵐に巻き込まれ飛ばされてしまった。

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