002 スケルトン中華ロボ戦

 <スケルトン中華ロボ戦>はVRゲーム<刀撃ロボットバトルパラダイス>にとって、伝説レジェンドであり、同時に多くの同盟ギルドにとって最悪の悪夢だった。


 ゲームプログラムが突如、暴走し、最強スペックのラスボス<スケルトン中華ロボ>が出現、ログアウト不能の強制参加イベントであった。


 だが、多くの同盟員ギルドメンバーが勇敢に戦い、何と<スケルトン中華ロボ>を倒せないまでも、運営がプログラム暴走に気づくまでの24時間を耐え抜いた勇者たちがいた。


 彼らの多くは<十二聖刀>と呼ばれる聖刀使いだったが、中には飛礼やザクロ、メガネ隊長のように「殲滅刀技せんめつとうぎ」の分割使用により、聖刀の力を極限まで高めた者たちもいた。

 一見、平凡な聖刀が<十二聖刀>にも匹敵する力を発揮したのだ。


 ただ、この戦いの後遺症で<刀撃ロボパラ>からリアルにログアウトしたまま帰って来なくなったメンバーも多くいた。

 ゲーマーにとって、ゲーマー人生を左右するようなトラウマ的なアクシデントイベントでもあった。




 実は俺がスナイパーアレイに機体チェンジしたのも、大事に育てた<ニンジャハインド>をスケルトン中華ロボに一撃で両断されたからだ。


 一時はこのゲームを離れて引退当然になっていた。

 そんな俺に声をかけてくれたのがメガネ隊長であり、飛礼隊長だった。


 

 そんな長々とした回想も、そろそろ終わりが来そうだ。

 次の狙撃で完全に俺の機体の位置が特定されるだろう。

 相手の機体操縦技術と予想力はずば抜けていて、かなりの手練てだれのパイロットが搭乗してる確率が高くなった。

 仕方ない。

 中距離武装のあれを出すしかないか。


 俺は背中からくの字型の武器を手に取って、思いっきり投擲とうてきした。

 ステルスブーメラン、見えない刃だ。

 卑怯極まりない武器であるが、敵に嘲笑うかのように軽くかわされてしまった。


 おそらく、音で完全に位置を特定された。

 真っ赤なニンジャハインドが姿を現して、機動突撃をかけてきた。


 鬼虎隊の赤い悪魔、聖刀<紅蓮剣ぐれんけん>の使い手といえば、ナガモリだ。

 逃げ回るだけが取り柄のスナイパーにとって、最強最悪の相手だ。

 まあ、それも立派な戦術だが、相性最悪なのは確かである。


 一気に距離を剥ぎとられて、刀撃が一瞬で俺の機体を襲った。

 とっさに、腰の聖刀を抜刀して一ノ太刀をはじく。

 聖刀<蕨手刀わらびでとう>、飛礼隊の平隊員がもつ平凡な刀のひとつだ。

 柄に蕨を巻いて使用したという蛮刀である。

 湾曲した短い刀で東北でつくられた日本刀の原点である刀である。

 丈夫なだけが取り柄だ。

 


 が、返す刀で二ノ太刀、二撃目が来る。

 これも刀のつかでギリギリで受ける。

 

 三ノ太刀で<紅蓮剣ぐれんけん>発動、受けても炎を纏った聖刀に両断される。

 かわせない。

 かわさない。


 ゼロ距離突撃。

 敢えて一歩踏み込む。

 一瞬で<蕨手刀わらびでとう>を腰に戻して、低い姿勢で三ノ太刀を掻い潜りつつ、両手のビームトンファーを叩き込む。

 かわされる。

 さすが。

 機体の左手が肩から失くなっていた。

 だが、右手の居合い抜きの一撃が<ニンジャハインド>の上半身を横薙よこなぎに両断した。

 

 と思ったら、残像でかわされていて、四ノ太刀が棒立ちの俺の機体を襲う。

 ただ、いつまでたっても、<紅蓮剣ぐれんけん>は俺に届かなかった。

 あらかじめプログラムしていたスナイパーレーザーライフルの銃撃が<ニンジャハインド>の頭を吹っ飛ばしていた。


 何とも卑怯な罠だなと思ったが、刀撃で勝てそうもないから仕方ないだろう。

 まともにやっては勝てないだろうし。

 メガネ隊長から通信が入ってきた。 

 

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