2ー97★無事だったのは?
『あれ…フィリアさん…?』
俺が目の前の物体に一撃をいれて中を確かめようとした瞬間、小屋の窓が開いた。
全く予想をしていなかったので一瞬ビックリしたが攻撃をしてくる様子はない。
とりあえず顔を出したのが誰かを確認してみようと剣を腰に差し直して明かりを窓の方に向けると、そこにはフィリアの顔があった。
(とりあえず焦ったけど、やっぱ想像通り彼女の方は無事だったみたいだな)
直後、彼女の口から出た言葉が…
『フェン様…』
『えっ?』
小屋の方の明かりはついていない。
彼女は用心のために暗闇の中で避難をしていたのだろう。
そのために彼女の表情を確認することができない。
だが、だからと言って誰なのか全く検討もつかない状況と言うわけでもないのだが、彼女は俺を見るなりフェンと言ってきた。
いい間違いなのか?
えっ…、でもフェンは先に彼女の元に駆けつけていたりするんじゃないのか?
違うのか?
『あっ…、申し訳ございません。ナカノ様』
彼女は直ぐに言い直してきたのだが、言い直すまでの反応が早すぎるような気がする。
やっぱり少し腑に落ちない感じだ。
俺は近くにフェンもいるのかと思って辺りを見渡すのだが、暗くて周囲がよくわからない。
彼女は見た感じ明かりの方は持っていないので、恐らく周囲の状況は俺の方がわかるとは思うのだが…
『いえ、別に大丈夫ですよ。それよりフィリアさんは大丈夫でしたか?』
『はい、ワタクシの方は大丈夫でした。ナカノ様の方も大丈夫でしたようで』
『あー、はい。俺の方も大丈夫でした。後はフェンということになるんですけども…』
そこまで俺が言った直後、彼女は俺から明らかに目をそらした。
『えっ…、フィリアさん?』
『あっ、いいえ。申し訳ありません』
『別にそれはいいんですけど…、どうしたんですか?様子が変なんですけど…』
『いいえ、そんなことはありませんけども』
とは言う彼女なのだが、明らかに様子がおかしい。
最初の第一声は単なるいい間違い?
から、その後の挙動不審ともとれるような一つ一つの動作まで、知り合ってからの長さがどうのこうのということなどではなく、人の動作として何か納得いかない部分があるように感じる。
『とりあえず大丈夫なら安心なんですけど…後、先程から姿が見えないんですけどフェンはどこにいるんですか?多分、俺よりも前を走っていったので、先に貴女の方へたどり着いているとは思うんですけど…』
『ワタクシは…』
彼女はそこまで言うと声は尻すぼみというような感じに消えていき、再び俺から顔をそらした。
ん?たどり着いたってことに「ワタクシは…」なのか?
『えっ?フェンと会ってないのですか?』
『えーっと…、はい…』
『嘘でしょ?』
『いいえ、嘘ではありません』
俺は彼女のこの言葉に一気に自分の全身の血の気が引いていくのを感じてしまう。
『じゃー、どこに…?』
(おいおいおい!なんだよそれっ…)
そこでまで彼女と話すと俺は、とりあえず小屋の周囲を回ろうとしたのだが…
その様子を見て彼女の方も小屋から離れようとしたのだが…
その時、俺は我にかえった。
彼女に結界の周辺のあのモンスターの群れを見せてもいいのかと。
そこで細かいことは考えたくはなかった俺は、フェンの安否を探るべく彼女に小屋の中を探って貰うように頼んだ。
俺の方も周囲がまだ安全と言えない状況だけに、大きな声で呼び掛けるようなことはせずに明かりを振りながら何度も何度も小屋の周囲を往復した。
結界ギリギリの辺りもくまなく見るのだが、もちろん見つからない。
どれだけ時間を費やしたのかは定かではないが、小屋の周囲を自分で納得のいくほど探した結果、俺の中で小屋の周囲に彼はいないと言う結論に達した。
俺の中ではフェンは彼女と先に会っているものだと思っていたのだが、彼女に聞いてみると会っていないと言う。
彼女は小屋の中にいた。
そして今、彼女は小屋の中も詳しく探してはみたがどこにもいないと言う。
血が落ちていたりなど誰かに襲われた形跡などもない。
小屋の外にも中にもいないだと?
そんな状況なんてありえるのか?
結界の外に出てと言うことなら考えられなくはないのだが、結界の周りには今だってモンスターの群れがある。
そんな状況で出ていける訳がないはずだ。
もしも出ていけるとしたら、先ほどのあれほど対処に困った素振りなどを俺に見せなかったはず。
そんなことをひたすらに考えていく。
中にも外にもいない状況だけに、俺はこんな時こそ落ち着かないとなと思い。
再び彼女が悲鳴をあげたときから俺とフェンの行動を追ってみることにした。
俺と彼は睨みあって悲鳴を聞いたら、彼は俺と左右逆方向から小屋に向かう。
位置的には小屋の入り口の方。
ここまでは間違いないはず。
そうなると当然小屋の入り口に何かあるのかと言う話なのだが…
先程、フィリアも何もないと言っていて念のためと思って俺も見てみたが、やっぱり何にもなかった。
うん、間違いない。
そうなると…
悲鳴の前後で何か異変があったものは無いかと考えた結果…
俺の頭に浮かんできたものなのだが…
多分、と言うか…
やっぱり、あれしかないだろう…
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