2ー92★気になる周囲の様子
アスタロトがフィリアを探しに来ている。
俺は頭の中で自問自答を何度も繰り返してみたが、この山小屋で起きた状況を考えるとそれはもう疑いようの無い事実に思えて仕方がない。
彼女が誰かに狙われている。
その事はあらかじめ聞いていたことなのだが、まさかそれが自分とも因縁がある相手だとは俺も思っていなかった。
確か彼女が狙われているのは、ヨハン?
と言う男か、もしくはその一味だと言うのがノルドの考えだったはず。
それならば、その考えの中にアスタロトが入っていると言うことなのだろう。
この事はフィリアに伝えた方がいいのか?
ん?
ちょっと待てよ…
俺、考えが脱線してないか…?
確か俺、今は山小屋の周囲を見ているはずなのだが…
そう思いながら、俺はもう一度辺りを見渡す。
どうやら俺は自分だけが色々と事実関係を確認できてしまったことで、この場で色々と考え出していたようだ。
確かにそれも大事なことなのかもしれないが、今の現状に迫っている未知と天秤にかけた場合、傾くのは未知の方だと思う。
そう思った俺は、先ず現状の未知に対して神経を集中させることにした。
前を見て、明かりの位置と大きさは先程とは変わっていない。
周囲は徐々に落ち着きを取り戻してはいるが、モンスターの声も若干ある。
恐らくではあるが現状は先程とそれほど変わっていないと感じた俺は、今度は余計なことを考えないように、再び明かりから目線をはずさないで一歩づつ歩き出す。
そして歩き出していくうちに、ある違和感を覚える。
俺はフェンと向き合っている最中にフィリアの悲鳴を聞いた。
そこで振り返った直後に明かりを見つけて今追いかけているわけなのだが…
その明かりが今まで大きさや強さなどが変わっていない。
これって変じゃないのか?
俺は今、小屋の裏側にある僅かな明かりは誰かが何かを見るために用意した明かりだと思っていた。
と言うことは、松明とかマジックランプのように誰かが持ちながら使用すると言うのが一般的な使い方のはず。
現に俺もフェンも片手で今、マジックアイテムを手に取りながら移動している。
それであれば…
何故あの遠くで見える明かりは、いつまでも大きさや強さなどが変わらないのだ?
普通、手にもって使っていたり、近くに人がいたりすると影が移ったりするはずなのに、あれにはそれがない。
『もしかして…近くにいない?』
俺は自分の考えをふと口に出しながら、再び周囲を注意深く見る。
だからと言って周囲に何か怪しいものがあるのかと言われると、夜だけにそれを確認するだけの光源が今はない。
『でも…それは、あそこも一緒なんだよな…』
一瞬、あそこに人がいないのであれば、一気に近づいてもいいのか?
と頭の中で考えたのだが、それは大きな間違いと言うのにすぐ気づく。
単純に明かりの周囲に人がいないと言う可能性でしかなく、別に明かりが安全と言う考えではないからだ。
マジックアイテムなどのトラップと言う可能性もあるし、何かの儀式という可能性だってあるはずだ。
もしかすると何かの儀式…?
あれ…?そう言えば…?
んー…
俺はこの時、色々と引っ掛かりを覚える。
確かソフィアがアスタロトが使っていた召喚魔法について色々と言っていたような気がしたからだ…
俺はあの時、自分には魔法に関する知識がないからとソフィアが話してくれたことは、流していた感じがする。
それが今になって後悔していた…
『都市に戻ったらもう一度聞きに行った方がいいかな…』
今回の依頼には参加していない彼女を思いながら、俺はもう一度彼女の話を思い出そうとしていた。
確か彼女があの時言っていたのは、アスタロトは多分だが子供だろうということ。
召喚魔法と言うやつは、普通の魔法と違い色々と制約があったり難しかったりすると言うこと。
等だったとは思うのだが、正直なところ細かいところまでは覚えていない。
今回の相手?
未知の対象がアスタロトと言うのは、あくまでも俺の中だけの話であって正直なところ確証的なものは何もない。
現に直接目撃したと言うこともないだけに…
何もないのだが…
それでも、その僅かな手がかりから推測する限り、遠くに見える僅かな明かりというのがフィリアの悲鳴と無関係であるとは思えない。
そして彼女が悲鳴をあげたが、明かりの近くにはいない可能性と言うのは非常に大きい。
こうなると、恐らく明かり自体かその周辺にトラップ的な要素と言うのが仕掛けられている可能性は小さいように思う。
本当なら明かりまで走って正体を確かめるのが一番なのかもしれない。
危険にあう可能性が少し減ったということで勇気を持てれば俺もそうしたかったのだが…
いまいち後一歩の決断が踏み出せない。
せめて、フィリアやフェンの様子なども分かればいいのに…
と思っていた俺だが、ふと気づいたことがある。
周囲は以前、モンスターの鳴き声などがするとは言っても、先程よりはだいぶ静かになってきていた。
そんな中で、小屋の方にもゆっくりだが少しづつ近づいている。
当然、小屋からの音なども少しは聞きやすくなったはずなのだが、先程のフィリアの悲鳴から一切の音沙汰というのが確認できない。
一体、二人は小屋の中でどうなっているのか…?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます