2ー31★王女の回想⑰彼女の本心は…
突然、ナニカに掴まれて連れ去られた王女。
自分の身に何が起きているのかはサッパリ分からない。
だが何となくではあるが一つだけ分かることがあった。
それは今の自分には地面を歩くような、地に足がついている感覚がないということだ。
そこから考えると自分は今、空中にいるのではないだろうかと彼女は考えていた。
とは言っても彼女には何故そのようなことになったのかは全く予想もついていない。
だが彼女の中でも、あまりよい想像というのは出来ていなかった。
どうにか状況を改善したいと思った彼女は、必死に叫び空中だというのにひたすら暴れだす。
その様は誰が見ても人生を諦めようとしている者の様ではなかっただろう。
★★★
ナニカに掴まれ空中をさ迷いながら、いつのまにか彼女は下の景色を気にしていた。
今、自分の視線の斜め下には大きな樹がある。
その樹は上空からでもハッキリと大きさを確認できるほどに大きい。
あれは確か…
昔、神が植えたとされる伝承を持つ樹…
もちろんそんなのは単なる伝承にすぎないのだが…
それでも、この樹の周囲ではいかなる争いもやめようと言うのは子供から大人までみんな教わることだなぁ。
などと考えだし自分が連れてこられた位置に検討をつけた。
そして…
掴まれてからある程度の時間が経過したのだろう。
不意に掴まれた両肩の痛みにも慣れだした頃。
王女はふと
いつもと違った視点からみる景色と言うのは何と綺麗なのか…
というような考えが頭によぎりだした…
よぎりだしたのだが…
そんな感覚は一瞬で吹っ飛んでしまう。
先程、掴まれていて若干の痛みを感じていた両肩は全く痛くない。
痛みに慣れたのではなく痛くないのだ。
先程、進行方向は水平だったのに対して、いつのまにか斜め下方向。
具体的には、樹の頂上を一直線に目指すようかなりの速度が加えられている。
自分の周囲には何もない。
自分を掴んだナニカでさえ…
これらの事から王女が自分は投げられたと認識するが、その時には全てが遅かった。
強い衝撃が自分の右肩に襲ってきたかと思うと、体の様々な部分が焼けるような感覚に教われる。
体のコントロールが全く聞かない状態で自身が回転しているのが分かった。
そして、それに合わせて自身には様々な箇所に痛みを感じだす。
様々な感覚が自分を襲う感覚に悲鳴をあげる隙もない。
一瞬でボロボロになったかと思うと、そのまま気絶してしまった。
★★★
手や足から、ひりつくような感覚が襲ってくる。
これが気絶から元に戻った彼女の最初の感覚だった。
何があったのか確認する上で、取り合えず痛い手足を擦ってみる。
すると、自身の体に無数の擦り傷があるのが確認できた。
その痛みを確かめていく内に彼女は気絶する直前に考えた事を思い出す。
やっぱりナニカに投げ出されたのだと…
とは言っても…
自分が連れていかれる理由は分からない。
そもそも、ナニカと言うのは何なのだろう?
などと考えながら、葉っぱと埃にまみれた自身の服を叩きながら今の自分の状況を確認する。
ここは…
樹の頂上?
と言うことは、
周囲の状況に他に大きな樹は見当たらなかった。
それであれば…
ここは
そして検討をつけ、次に手がかりになるものはないかと辺りを見回す。
すると後ろを向いたところで、彼女は一度視線が止まった。
そこにはかなり大きな鷲がいたのだ。
鷲がいることには、彼女も別段驚きはしない。
バビロンの周囲には普通にいる鳥だから…
ただ、今自身の背後にいる鷲は、彼女が知っている鷲よりは遥かに大きい。
小柄な女性とはいえ人間である彼女だが…
それでもこの辺りに生息している鷲と比べると、彼女は頭二つ分ほど大きいはず。
ところが背後にいるそれは、明らかに彼女より大きかった。
後ろから自分を黙って見ている様を見るだけでも明らかに自分より大きいのは感じられる…
恐らく今の鷲の様子から出で立ちを見ると足などは曲がっているのだろう。
なので体長を正確に考えた場合は、背が高い成人男性と一緒くらいなのではと思えるほどだ。
どうしよう…
ヤバイ…
それが彼女が鷲を見て最初に思ったことだった。
多分、自分を連れてきたのはあれで間違いないはず。
何故?
鳥の考えることは正直分からない…
分からないけど…
そんなの食料とか?
などと勝手に彼女は考えていた。
彼女は鷲を確認した後、周囲に武器や防具などの代わりになるものがないか確認をする。
だがあるのは棒切れや葉っぱばかり…
次に、自分の頼れるものは魔法なのだが…
手かせ足かせが邪魔をしているのか、カードが使えないのか分からないが上手く発動できない。
絶体絶命というのはこういうことなのだろうなと、心の中で思いっきり深いため息を吐く。
とは言ってもタダで食料となるのは納得がいかない。
そう思った彼女は少しでも威嚇できればと鷲を睨み付けた。
何か一つでも弱点があれば一矢報いることができるのかもしれない。
そう思い向けた彼女の視線だったのだが…
鷲の状態は、とんでもない状態だった。
背中には矢が刺さっている。
胸の辺りには火の魔法を受けたのだろうか、拳大ほどの火傷の後があった。
そして、足や肩の辺りなど体の様々な部分に切り傷が見られ下に血が滴っている。
彼女には、いつ倒れてもおかしくない満身創痍な状態に見えた。
誰かに襲われた…?
そう思った彼女は考えを改める。
確か自分は城でいきなり連れ去られたのだから…
恐らく城の兵士などと争った際に受けた傷なのだろうと…
とは言っても相手は獣。
先頭に関する知識がない彼女にとっては、それでも恐ろしい存在には違いない。
どうか暴れてくれるなよ…
と心の中で念じていると鷲が口を開けて人の言葉を喋った。
「ここなら大丈夫でしょう」
えっ…?
今、鷲が喋った…?
嘘でしょ!
でも、他に喋りそうなモノって何もないし…
目の前の光景に信じられず辺りを見渡す彼女。
そして周囲を見回しながら、その声が以前どこかで聞いた覚えがあるような気がしていた…
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