1ー59★アスタロト
今回の戦闘が始まる前にアンテロは敵は4匹と言っていた。
戦闘が始まったばかりの頃は従属モンスターは実の中にいたので数には入らないはず。
鳥は隠れていたが、1匹と考えられるだろう。
根は恐らく
そう考えると後、2匹いると考えられる。
本来であれば覚えておかなければいけないことだ。
だが今までの戦闘の中で最も大変と言える戦闘だけに俺は全く忘れていた。
一見すると少年のような可愛らしい声が聞こえた。
声の主は
俺は3つ目の正体がモンスターではないことに驚きを隠せなかった。
だが、それならそれでどんな顔をしているのか気になる。
葉から出していたのは、首から上で全体を紫のフードで覆われていた。
そして顔の正面であろう部分は白い仮面をつけている。
どうやらマジックアイテムの類いなのだろうか。
仮面の形や目や口の部分が細かく動いている。
装着している者の表情を表している不思議な仮面のようだ。
(あれじゃー仮面とフードを剥がさないと顔を確認できないだろうな…)
『あー、いたぁ~。いたぁ~。来たのは二人かぁ~。宜しくねぇ!』
非常に気さくな感じで声をかけてきた。
場所が場所なら「おう!宜しく」と返答してしまうかもしれない。
だが今は戦闘中。
そしてこの声の主は恐らくだが今回の戦闘に対して少なからずの原因があるだろう。
気を引き締めなければいけない。
『おい、お前、名前は何て言うんだよ!』
『えっ…名前ぇ?名前なんて聞かれたの何年ぶりなんだろうぅ…おにいさんは気になるのぉ??』
『気になるじゃねーよ。お前、自分から宜しくとか言ってんだから名前くらい教えろよ』
『あー、そっかぁ~。みんなからはアスタロトって言われてるよぉ~』
『ん?みんなからは言われてるって、お前それ本当の名前じゃないだろ?』
『本当の名前じゃないってぇ…まぁー、確かにそうだけどぉ~。でも名前ってぇ~、そんなに重要ぅ~?別に僕だって分かればいいんじゃないのぉ~?』
『もしかして…お前、子供か…?』
俺は目線の上にいる人物とは何となく話しても埒があかないような感じがした。
何を聞いても笑いながら要点を得ない回答しか返ってこないやり取りに、若干幼さみたいなものを感じた。
『年齢ねぇ~。ん~。数えるのをやめたから分かんないけどぉ…それも重要なことじゃない気がするんだよねぇ~。でも少なくともぉ~、あそこのおばあちゃんよりは下だねぇ~』
アスタロトと言ったそいつはソフィアを指差しながら言った。
『えっ…お前…あの人の年が分かるのか?』
俺はソフィアの年は以前に200を越えるとは聞いた。
もちろんイーグルの中でも最年長なのは間違いない。
だが外見だけを見ておばあちゃんと分かるような外見ではないはずだ。
長寿のエルフというのは外見で分かるから、後は勘なのかもしれないが…
もし違うとするなら何故こいつはそれが分かったのか…
『あんたら、なにくだらないこと喋りあってんだよ!二人まとめて張り倒そうかい!』
ソフィアは、そう言いながらアスタロトに向けて火炎魔法を放つ。
『あぶないなぁー、やめてよぉ~!そういうのは人に向けて撃っちゃダメだって習わなかったのぉ~?もぉぅ~』
アスタロトはソフィアが放った火炎を左手で振り払いながら体を反転させて降りてきた。
やめて、とは言っているが本気で怒っているような素振りがまるで見えない。
余裕の対応という感じがする。
『ふん。いけ好かないガキだね。大人しく黒焦げになればいいのに。アタシはこっちやるから、そっちはアタルちゃんに任せるよ!』
ソフィアは
確かにそれはパーティの中でもソフィアにしかできない。
なので俺もそうしてもらった方がありがたいのだが…
(この人…ちょいちょい、ちゃん呼びするんだよね…)
ちゃん呼びの突っ込みをしたかったが、今はそれどころでは無い。
思わず出てきそうな言葉をグッと飲み込んで、俺はソフィアの方を見ながら縦に頷いた。
『へぇー、僕の相手はぁ~、おにいさん一人でやるんだぁ~。それでいいのぉ~?ほんとにぃ~?後悔無いのぉ~?』
首を振りヘラヘラ笑いながらアスタロトが俺に問いかけてくる。
『なんだよ。俺一人じゃ、役不足だってのか?』
『んー、僕をやっつけるだけなら十分な戦力なんじゃないかなぁ~。多分、単純な殴り合いだと僕よりも全然強いと思うよぉ~』
『それなら、全く問題ないだろ!それとも今さら許して欲しいってことか?きちんと謝れるかどうか見てやるよ』
『んー?謝るのぉ~?僕がぁ~?それはないかなぁ~今のところはねぇ~。僕が言ったのはぁ~、そういうことじゃなくてぇ…さっきの見てて一番退屈そうな人が相手なのかぁ~って、ちょっと残念に思ったんだよねぇ~』
『何が退屈だよ!残念だよ!大人を馬鹿にするのも大概にしろよ!』
正確な身長はフードの先が尖っているから分からない。
だが、とんがりを含めても俺より10cm以上も小さく、体格的にも明らかに一回りぐらい小さく見える。
俺は自分が強いとは思わない。
それでもさすがに子供になら負けるはずがないと思い、拳を握り一気に勝負をかけるべく走って間合いを詰めた。
アスタロトは大きく後ろに一歩下がり口笛を吹いた。
あまりの口笛の大きさに正面で聞くことになった俺は、耳を塞ぎアスタロトから目線をそらしてしまう。
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