1ー45★嵐の前…
アンテロと職業登録所に同行した日の夕方。
『それなら今日、アンテロさんとの顔見せも兼ねて食事にでもいきますか?』
そう話してきたのはイーグルのリーダーであるヘンリーだ。
俺は職業登録所に行った後、製薬ギルドの方へアンテロを預けてきた。
初回は事務手続きの他に製薬ギルドの方でも詳しい説明などもあるらしい。
俺は製薬系の職業を持っていないので一緒にいても邪魔になりそうだと感じたので、アンテロには数枚の硬貨を預けて戦士系ギルドの方へ行くことにした。
戦士系のギルドの方では、俺よりも早くに来ていたエルメダがアンテロのことを少し喋っていたようだ。
とりあえず本日は来れないということを俺の方から話をし、イーグルと俺とエルメダとで討伐に行くことになった。
『今日イキナリですか?全く本人には喋ってないので、ビックリすると思うんですよ。それに俺の方も、そろそろやっておかないといけないこともあるので…』
俺は、近々ロスロー商会に卸すことになっている塩とギーの準備をこの数日間ほったらかしにしている。
近々フェンに再び会いに行こうと思っている手前、今日辺り何とかしなければならないと思う。
だから正直なところとして、これ以上自分の時間を割く余裕はなかった。
『そうなんですか。それは残念ですね。でも昼間のエルメダさんの話の通りナカノさん達の三人でパーティを組むことは決まりなんですよね?』
『恐らく、行動を共にするとは思うんですけど…ただ修道院で働いていた女性なので戦闘とかは厳しいと思うんですよ。なので最初はパーティの一員というよりは、外壁際で薬草採取とかをしてもらうのがいいかと思っているんですが』
『確かに最初から戦闘経験を積ませるのは考えものですよね…ナカノさんの時も緊張とか凄かったですよね…』
『そうなんです』
『分かりました。では今日はこれで解散しましょう!』
最後、エルメダとソフィアの残念そうな顔が何とも印象的ではあったが、アンテロとの食事は次回ということで持ち越しになった。
ということで俺とエルメダは製薬ギルドの方へアンテロを迎えに行くために戦士系ギルドを後にする。
『ナカノさん、もしかしてあの建物ですか?』
歩くこと数分。
【薬のご用命は当ギルドへ!】
と書かれた大きな看板をエルメダが見つけて喋ってきた。
『そう、あの看板の建物が製薬ギルドだよ』
『お腹も減ったし早く帰りたいから早く行こう!』
エルメダがそんなことを言って走り、製薬ギルドの中にさっさと入ってしまった。
走ると逆に腹が減るのでは何て考えながら俺もエルメダの後に続く。
製薬ギルドの受付まで来た俺たち二人は、前に座っている受付の女性に午前中の用件を喋りアンテロを呼んでもらった。
俺とエルメダが受付前にある待ち合い用の椅子に座って数分後、後ろの方から聞きなれた声がした。
『ナカノ様、お待たせいたしました。あっ、お嬢様までご一緒とは…申し訳ございません。ですが、おかげでギルドの方でも有意義な時間を過ごすことができました。ありがとうございました。』
聞きなれた優しい声が耳に飛び込んでくる。
俺は白いフードに身を包んだ、あの一瞬天使かと間違えてしまうようなアンテロが来たと思った。
恐らくはエルメダも同様のことを思ったはずだ。
俺とエルメダの二人が同時に、声のする方を振り向いたのだが…
俺たち二人は揃って口を半開きにしたまま絶句した…
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