1ー23★ポテチーズ

今、俺は自分の家のキッチンにいるのだが、前にエルメダとアンテロが座っている。

昨日、フェンとの話し合いが済み次第、孤児院に寄りスルトに相談したところ空き地の方は貸してもらえることになった。

だからと言って直ぐにフェンに話をもっていくほど俺も馬鹿ではない。

出すべき料理についての反応等も知っておきたいので、味見役兼当日の協力者としてエルメダとアンテロに協力を仰いだと言うわけだ。


『それが先程お話を頂いたギーという油ですか?お鍋の方には、ずいぶんと大量のギーが入ってますね』


アンテロが不思議そうに訪ねて来た。

こっちの世界ではオリーブオイルは高価なモノらしく、余り大量に料理に使うことが無いようだ。

先ずは見た目のインパクトを知りたかったのだが、掴みはバッチリらしい。

エルメダなんかは、無言で目を大きくして鍋から視線が動かない。


『そうです。最初にギーを鍋に入れて熱しておきます。その間にこのガイモジャを用意しておきます』

『準備ですか?皮剥いて薄く輪切りにしておくんですね』

『皮を剥いたら水に晒しておきます。こうするとガイモジャのヌメヌメが取れ易くなりますから。時間は、砂時計1回でじゅうぶんです。その後、なるべく綺麗な布や紙で水気をとっておいたものがこのガイモジャです』

『なるほど、意外に手間かけるんですね』


(水に晒すのを手間と言うのか…)


『後は、このガイモジャをギーに通してサクッと揚げて、隣の網つきバットに揚げたガイモジャを移して油を落とします。食べる直前に粉チーズをかけて食べます』


俺は喋りながらポテトチップスを皿に盛り付け、アンテロとエルメダの前に出した。


『確かに大勢に出すには、うってつけの料理ですね。では、いただきます。』


アンテロは俺の料理の説明を聞いた後、納得したようでポテトチップスを食べ始めた。

だが、エルメダは大量の油を使った料理というのが未知だったらしく、若干躊躇しているようだ。

アンテロの顔をチラチラと気にしているのが何とも面白い。

アンテロは熱い食べ物には慣れていないようで、手で持ったときに少しビックリして放していた。


(初見の人には本当の出来たて熱々だと食べづらいのかな?)


二度目にポテトチップスを持ったときには、少し熱が逃げたこともあり問題なく口に運んだ。

無言で食べながら、3枚目のポテトチップスも口に運ぶ。


つい先日にも聞いたことのあるプゥプゥ・・・・という音が聞こえた気がした…


4枚目もまた口に運ぶのかと思ったところで、水を飲んで気持ちを落ち着けてから喋り始める。


『これ…何というか…止まらないですね。一度食べたら病み付きになりそうです』


アンテロの言葉を聞いてエルメダが迷わずに数枚を口の中にいれた。

ただ薄いポテトチップスとは言っても、芋をそのまま輪切りにしているので横幅は結構ある。

それにチーズと合わせているので口に入れると結構噛みづらいはずだ。

一生懸命喋ってはいるのだがエルメダは何をいっているのか全くわからなかった。


『○▲□☆★◎⚫…』

『お嬢様、先ずはお水を飲んでください』

『はー、はー、これ、凄いのー。とってもおいしいの。こんなの初めて食べた!簡単そうだし!ナカノさん、どこでこんな料理覚えたんですか?』


(ポテチにチーズは間違いなくデブ飯だな…)


間違いなく両名が聞いたら激怒するだろうなと思うことを心の中に仕舞った。


『アンテロもエルメダも気に入ってくれて良かったよ。俺の地方の簡単お手軽料理で、名前をポテチーズって言うんだよ。これをさっき話したフェンとの食事会で出そうと思うんだけど、どうかな?』

『はい、大丈夫だと思います。私もお手伝いできることはさせていただきます』

『はーい!アンテロと一緒に私もナカノさんのお手伝いします!孤児院のみんなにも早く食べさせたいなー』

『ありがとう。孤児院のみんなには気持ちは分かるけど…当日まで秘密だよ』

『そっか…』


俺はアンテロとエルメダからの反応も思いの外順調だったので、後日のフェンとの食事会に確かな手応えを感じた。

そしてこの後3人で当日受け持つポジションを相談することになるのだが…

俺は芋を切り水に晒すのをアンテロ、水気を取り揚げるのを俺、皿に盛り付けてチーズをかけて出すのをエルメダにしようと提案した。

するとエルメダが自分の役割が少ないと駄々を捏ねはじめた。

元々の行程が少ないんだけどね。

結局、エルメダの説得に30分以上も費やしてしまった。

お腹一杯ポテチを食べさせることで納得してくれたようだ。


(14才ならまだ食い気という人もいるかもね。でもいくらなんでも4皿は食い過ぎだろ…)

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