1ー15★待っていたのは…

いつも通り昼まではアイテム運びの仕事を行い昼食を済ませて、冒険者ギルドに戻るとソフィアが受付前の長椅子に座り俺を待っていた。


『はーい!ここ~!』

『ソフィアさん、どうも』

『お昼は食べたみたいだね。それなら早速行きますか。場所は、はいこれ!』


とソフィアが1枚の羊皮紙を渡してきた。

内容は孤児院のパンフレットに見える。


『これって…書いてあるの孤児院なんですけど…この番号にムーブでいけば良いんですか?』

『そういうこと!じゃー、宜しく~』


(ん?孤児院?なんか覚えが…)


ソフィアの指示通りにムーブを行うと小さな部屋に移動した。

恐らくは孤児院の中にある1部屋だと思われる。

部屋には2方が待っていた。

一方は俺と同じくらいの年齢に見える女性だが耳が長いところを見ると恐らくエルフだと思われる。

恐らくは魔法使いなのかなと思わせるような鍔の広く、背の高い三角帽子を被っている。

もう一方は随分と高齢に差し掛かっているのではないかと言う老人の男性だった。

普段は教会でも働いているのか、頭にはビレッタ帽を被っている。


『はーい、到着でーす!エウラ~、来ました~』


軽い感じでソフィアがエルフらしき女性に挨拶をした。


『こちら、エウラ・ベオルで私の姉でーす!そしてこちらは、その旦那さんのスルト・ベオルと言いまーす!こっちはエルメダとチーム組んだアタルちゃんです』


(は?ソフィアの姉ってことは…エルメダの両親?あれ?孤児院?エルメダが働いてるのって…え?エルメダとチーム組んだ?今、アタルちゃんて言われた?)


一瞬でパニックになりベオル夫妻とソフィアを交互に見る俺。

パニックになり突っ込むべきところが多いのにスルーしてしまう。


『どうせ貴女は説明しないで連れてきたんでしょう…困ってるじゃないの』


俺の素振りを見てエウラがソフィアに注意を促すように喋っている。


『部屋を見るって言われたのに来たのが孤児院だったんで…』

『あー、はい!ではわたくしが案内いたしましょう。こちらです』


スルトが部屋の扉の方へ歩きながら俺へ喋りかけてくれた。


『いきなりですいません』


部屋で待っていたことから今日くるのは事前に聞いていたと思うが、孤児院を出てから目的地にたどり着くまでの間に何を喋れば良いのか分からなかった俺は、そんな言葉を発していた。


『そんなことありません。こちらこそソフィアが恐らく何も言っていないだろうとは思いましたが…』


何て言う言葉を聞いた直後に俺とスルトはお互いの顔を見ながら思わず笑いあっていた。


(ソフィアって、やっぱりそんな性格なんですね。)


『あー、見えてきました。ソフィアが言っていた貸家です』

『え?貸家?俺は部屋って聞いたんですけど…』


スルトの指の方へ顔を向けると都市から外れている立地のためか、セレブの別荘に見える家が1軒見えてきた。


『え?あそこで独り暮らし?』

『お気に召しませんか?』

『いやー、気に入りはしますが…絶対高いでしょ…』

『おや?聞いてませんか?別に家賃などは要りませんが』

『確かに聞いてますけど…さすがにあんなに立派だと…』

『娘のパーティの方と聞いてますし、出来る限りの協力はさせてもらいます』


(なーんか、断りづらい雰囲気出してきますね…ってやっぱりエルメダって娘なんですか!)


『宜しければ中に入り寛ぎながらお話しした方が良いのではないでしょうか?』

『そうですね、中も気になりますのでお願いします』


今後スルトとの話の展開をどこに傾けていけば良いのか迷いながら俺は見学先に向かっていた。

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