第36話 歴史のスイッチは間違った方に

 このボートそのものや技術情報を渡すべきか否か。

 正直なところかなり迷った。

 何せこの世界では軍は必要不可欠の存在だ。

 侵略して侵略されてが当たり前のように発生しているから。


 ……(中略)……


 散々考えた結果、俺の意見は『今はまだ公開しない』となった。

 実際に製作したシモンさんもこの意見を支持してくれた。

 なおヨーコ先輩とナカさんは軍には公開してもいい派。

 シンハ君は民間にも公開した方がいいのでは派だ。

 でも結局『今回は制作者と考案者の意見を尊重しましょう』というアキナ先輩の意見に全員が賛同してくれた。

 でも軍はそれでは済まなかった!


 そう、俺達が『渡さない』旨を返答した瞬間。

 ふっと意識が遠のいて、気がつけば檻の中に居たわけだ。

 耐魔法措置がかかっているらしく魔法が一切使えない。

 檻もシンハ君の怪力ですら曲げられないくらい太い鉄格子だ。

 なお俺と同室なのはシンハ君だけだ。

 どうやら男女別に檻に入れられた模様。


「お父様、何をするんですの!」

「悪いな。これは軍事的な転換点となる技術になりそうなのだ」

「でも閉じ込める事は無いでしょう」

「他にこの技術が漏れると拙いからな。私としても不本意なのだが仕方無い」

 向こうの檻の方から聞こえるそんな台詞を聞きながら俺は考える。

 あそこで『渡す』という結論にしたらこの結果も変わっただろうか。

 でもそう答えても結果的にはこうなったような気がする。

 そしてこれから先どうなるかはわからない。

 このまま生かされるのか、それとも……


「悪いなシンハ、こんな事になっちまって」

 シンハ君は苦笑いを浮かべながら応える。

「ちょっとやり過ぎたのかもな、俺達」

 俺達2人は深い深いため息をついた。


 ~END~

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