白馬に乗った王子様を探していたら不良系肉食男子に捕獲されてしまいました(涙)

桜蓮

第1話

◇◇◇◇◇


「あ……あの……何かご用でしょうか?」


そう尋ねる私の声は自分でも分かるくらいに震えている。


眼孔鋭く見据える切れ長の瞳。

弛められているネクタイに第2ボタンまであけられたカッターシャツ。

腰まで下げられた学校指定のズボンからはカッターシャツの裾が飛び出していて、ブレザーの前ボタンは全開。

身長は見上げるほどに高い。

陽の光を浴びて茶色に輝く髪は天然のものじゃなくて、明らかに人工的なもの。

耳には痛々しい大きさのピアスが突き刺さっている。

斜に構えたその立ち姿は今にも殴りかかってきそうな気迫さえ感じる。


私は彼の眼を正面から見ることができなくて、それとなく視線を逸らしてしまう。


「俺、あんたと付き合いたいんだけど」


頭上から振ってきた言葉を私は瞬時に理解することができなかった。


「……」


咄嗟に返事を返すどころか黙り込んでしまった私に


「あんたに一目惚れしたから付き合ってほしい」


彼はもう一度――今度は悩む必要がないくらいに分かりやすく言い放った。

そんな彼のまっすぐすぎる眼差しを戸惑いがちに受け止めながら


……なんでこんなことになってしまったんだろう……。


私は困惑しまくっていた。

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