俺達はオス

機嫌の良かった父親、

龍美(たつよし)が急に顰めっ面に

なりため息をはいたのを

見た龍成は


「フフどうしましたか?」

龍成は観葉植物に水をさしながら

穏やかな表情で父親にたずねる。


勝成とは見てくれも同じくイケメン

だが、本家の長子と言うこともあり

穏やかで性格は勝成とは違う。



「いやぁ、勝にお前の嫁探し

を頼んでいてな‼


これぞという子がいたらしくてな

勝も乗り気だったんだがな

ハァ

なんと‼勝成の好きな子だったらし

い。

勝は人を見る目だけは優れてい

るんだよ。」



「へぇー勝叔父さん 、そんな

特技あるんですね。ハハハハ」


「他人ごとか?

好きな子は居らんのか?」


「いませんよ。

ん〜でも

勝成の好きな子って興味あります。」


「じっは、俺も・・・。」

龍美と龍成はニヤリと笑う

似た者親子とは良く言った物だ。




「はい。黒岩歯科です。

いかがなされましたか?」


「えっ・・と、歯石を取って

貰いたくて‼」


「はいお待ち下さい。」


「今日でしたら15:00が空いて

います。予約制なので後は埋まって

おりまして・・・。」


「分かりました。

三時でお願いします。」


「お名前、お伺いします。」


「倉敷龍成です。」


龍成はどんな子なのか楽しみに

時間を調整して黒岩クリニックへと

向かった。


誰が言っても、女遊びを

やめなかった勝成に意中の

彼女がいると言う。

そりゃー‼うん。

興味湧かない訳が無い。


カーブを曲がり、黒岩クリニック

の看板が見える。


ナビどおりに車が入って行く。


小さな庭には、ライラック、ポピー

アカツメグサ、それにピンクの花が

可愛らしいアケボノフウロ

園芸を趣味に持つ龍成には目を喜ばせる植え込みだった。


ふと目をやると

すずめ用の水場や餌があり

お年寄りのちょっとした憩いの

場になっていた。


お年寄りと擦れ違う時軽く会釈をする、お年寄りもニコニコしながら、

「今日はお天気が良くて

小鳥がたくさんね

可愛いわ。」


龍成もニコニコしながら

クリニックの入口に立つと

自動ドアが開いた。


ドアが開き背が183(推定)

髪はきっちりビジネスカット

鼻が高く銀縁眼鏡の奥から覗く

切れ長の目。


ウワッ、イケメン。

歯科の助手は皆思ったが

仕事仕事



しかしミクだけは

「アッ‼」

声をあげた。

勝成が来ていたと思ったら?

ちょっと違う。

小玉スイカとかぼちゃの違い


キュウリとズッキーニの違い

ピーマンとパプリカ

似てるけど別物‼



「倉敷様、倉敷龍成さま。」


「はい。」龍成は、スックと腰を

あげた。


「ミクさん?」

龍成はミクに声をかける。

ミクが振り向く。

「やっぱり噂のミクさん。」


「えっ😱噂?」


「ハハハハ俺は、勝成の従兄弟です。

よろしくね。

あ、これ名刺渡しときます。」


「あ・・りがとうございます。

よく似てらっしゃいますね。

最初、勝成さんが来たのかと

思いました。」


「あれ?勝成の彼女じゃないの?」

ミクは顔の前で手をブンブン振った。



「いえいえ、違いますよ。

彼、面白がってるだけです。

ってか、彼は元旦那の親友なんで

すよ、それだけです。」

ミクは名刺を見ながら


「へぇー、専務さん、

凄いですね。」


彼女はニッコリ笑い名刺を

ポケットにいれた。


「先生が見えるまでお待ち下さい。」


そう言っていなくなった。

なるほどマスクしていても

可愛らしい。


まあるい目で見られると

凝視できない。


「ミクちゃん目当ての男子が

増えてね。

虫歯も無いのにね。チラ‼」


ハハハハ

受付のおばちゃんはミクの、

虫よけらしい。

当て付け がましくニッコリ。


この時龍成はミクに名刺を

渡した事で、

ミクから連絡が来ると思っていた。

今まで大半の女は、龍成の見てくれと、専務の肩書きにその日の

うちに連絡をしてきた。


「そう時間はかからないはずだ‼」

龍成には自信があった。


「叔父さんの人を見る目を

確かめてやる。」

龍成は楽しみで仕方なかった。


勝成は龍成が横恋慕しようと

企んでいるとは知らず、

どうしてミクに近付こうかと

頭を悩ませていた。


やはり血筋か、

勝成が拓哉にしたように、

用意周到に龍成もミクに攻め

入ってくる。

ここはさすが血筋‼



1週間、2週間、ミクからの連絡は

無い‼イライライライラ

龍成は専務室の広いペカペカの

机に携帯を置いて人差し指で

トントン トントン


落ち着かない様子。


時々(o´Д`)=зはぁー(o´д`o)フゥー

とため息が漏れる。


コッチの勝成もどう手を出して

いいか分からない。


やはりコッチもため息が漏れる。

(´Д`)ハァ…フゥ(o´・`)=з



♪♩♬♪♬♩♩♪♪

着信音が何回も・・・


『あーめんどーい‼』

勝成は、合コンで会った彼女達

からひっきりなしに着信音、

そう今日は金曜日、

女の子に又誘われる。


「おう加奈子、どうした?」


「ねえ、勝成飲み行こー。」


「いや、今日はやめとく‼

用事有るし。」


「えーぇ、加奈子もう

来ちゃった!」



「 ギョッ

会社にぃ〜来てるの?」


「うん。下にいるよ❤」


「ゲッ じっとしてろ‼

すぐ行く!」


加奈子は拓哉と不倫した葵の

連れだ。


勝成が勤め先を言わなくても

拓哉が葵と付き合っていたから

自然と加奈子には分かってしまう。


葵と拓哉が会う度に俺達も

まあ、そう言う事になった。


俺は独身だし、加奈子は

彼女でも無い。

遊び相手、まあパパ活みたいな

所があった。


服欲しいと言えば買いに行ったし

バック、サイフ、靴

俺も加奈子が可愛かったし

それなりに金を使っていた。


その対価として、気が向けば

そう言う事もする。



「ん?これってATM。

俺はATMなのか?


ま、いいか‼」


割り切った関係はそれなりに

線引きして、クリーンにするべき

・・・加奈子も若い彼氏がいるみ

たいだし本気じゃないんだろう。



エレベーターを降りると

ハーフカットのゆるふわパーマ

黒いパンツに花柄のレース、

水色の踵の高いパンプスを

可愛らしく着こなした加奈子がいた。


「加奈子」


声をかけると加奈子は振り向いて

可愛らしく笑い、手を胸の辺りで

「かっな〜りぃ」

と言いながら小刻みに振った。



加奈子は可愛らしく綺麗だし、

スタイルが良く人目を引きつける

連れて歩く、遊ぶ女としては

最高と思う。


ただの彼女は友達の延長

恋人と呼ぶにはかなりの懸念がある。


愛おしい、そんな気持が湧かない

ただその場だけなら楽しいぐらい。

それは恋人とは言わない‼

そう遊びなんだよ。


何人かと本気で付き合おうと

思ったが中々そう言う女性とは

出会わなかった。


加奈子は俺の腕に飛びつき

しっかりと握りしめた。


「オイオイ加奈子

勘違いされるからヤメロ‼」


「いいでしょ❤

だあってぇ、そんな関係なんだ

から・・・。」


「会社の中なんだから

困る‼」


「いーじゃない!そんなのぉー

気にしないでよっ❤」



「お前といい、葵といい、

ホント類は友を呼ぶだよな‼」


「なぁにょおー、失礼ねっ‼」


「いいかー

ナメクジ君はジメジメした所が

好きだよな!

百足は腐った木や、材木

なんかによく、居るよな‼


なぜでしょう━━━か?」



「そりゃー住み安いから。」

加奈子は人差し指を上に向けて

満面の笑顔で答えた。


「だけじゃないんだなぁ、

気分が落ち着き、害虫に取っては

天国だからだよ。」


「ゴキブリを清潔なとこで飼って

見ろ、ゴキブリは、苦痛だぞ!」


「勝成、何が言いたいわけ?

加奈子を、ナメクジとか百足とか

ゴキブリと同じだっての!?💢

๑`o´๑ 酷い‼」


「ハハハハまあまあ聞けよ。

お前と葵はATM化した

見てくれのいいイケメンが好きな

だけだ。

な‼ 同類だろう‼」


「ちがーうょお

勝成が好きなだけ‼」


「じゃあ、俺を食わしてくれ

1ヶ月お前ん家に寝泊まりする。

あ‼

弁当も洗濯も、朝飯もたのむよ。


俺さ‼“

仕事やめて、転職しょうと思うんだ‼」


「エッ‼ 会社やめるの?

何するの?」


「しばらくプー

その後考える。


じゃあお前ん家に引っ越すから

いつにしょうか?


加奈子が休みの日がいいか?」

ニヤニヤしながら加奈子の顔を見る。


「え〜勝手に決めないでょー」


「まあ、立ち話もなんだ‼

加奈子ん家で、まず飯食うか?

スーパー行くか?」


「え、家?ウチ来るの?

今から?」


「大丈夫、未だ働いてるから

金はあるぞ

買い物代くらい出すからサ。」


加奈子は急に立ち止まり動かなく

なった。


「え、あ、困る・・カモ。」


「困る?何で?」

勝成は先を歩いていたが振り向いて

加奈子を見た。


「えっ・・と、何で?って

家分かるじゃん。

そしたら家に来るんでしょう。」


「当たり前だ‼

その為に行くんだし!

な‼ 加奈子」


加奈子はそれ迄見せていた

可愛い目をつりあげて、

キッと睨んだ。


「養えない‼」


「あれっ、俺を好きじゃないの?」


「勝成は素敵だし、カッコイイよ。

でも、ヤッパリ

お金が無いと魅力無い‼」


「ヤッパリATM?

おれ、ATM失格か?残念‼」


背の高い勝成は髪の毛を梳き

ながら「参ったな﹏ 」

テキな表情をする。


「意地悪‼ 仕事やめる男を

養うわけないじゃん。

もう連絡して来ないでヨッ‼💢」


加奈子は来た時の満面な溢れる

笑顔とは掛け離れた👹の形相で

プンプンプンスカ

ドスドスドスと帰って行った。



`,、 '`,、‘`,、‘`,、’`,‘`,、‘`,、’`,、

「バカメ‼今は辞めないけど何れは

やめるサ、嘘じゃない‼


だって、オレ跡継ぎだからサ。

シャーナイじゃん。」





ミクから連絡は無し‼

最初に痺れを切らしたのは

龍成だった。


「倉敷様、倉敷龍成様」


「今日はどうされましたか?」


「ああ、の又歯垢を取って

貰いたくて‼」


「ん〜別にきれいですけど

はい、ご案内します、どうぞ〜」


「あの、河内さんは?」


「今日はお休みですよ。」


「えーマジ?」


「ん?

最近ミクちゃんが離婚した

って 話が広がって

ミクちゃんファンが来るんですよ。

虫歯もないのに﹏

貴方もデスカ‼」


「えっ・・と‼

違いますよ‼

真面目に、治療です。

そうそう歯ブラシも買わないと‼」


「ふう〜ん、(。¬д¬。)ホントニ?」


「あの〜ちなみにミクさんの

携帯番号・・とか‼」


「教えません。‼●`ω´●」



「デスヨネー」



治療が終わると龍成は

道向かいのカフェに入り昼食を

とる事にした。


椅子を引いて腰掛け、窓から

外を見た時、一台のチャリが

ミクを乗せて通過した。



“オオイ“


龍成は慌ててカフェを飛び出した。

しかし無情にも走り去る🚲=

必死で┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

追いかける。



真向かいのクリニックに一台の

お高そうな車が入って行くのが見えた。

向かいのクリニックには高級車が

2台並んで止まった。


一台目、黒は龍成

二台目の青は勝成


さらに白い高級車が並んだ。

三台も止まっている。


そう、三台目の白は拓哉。


龍成は、チャリで駆け抜けたミクは

又この道を通るはずと思って

張る事にした。


カランカランカラン


カフェベルの方に目をやると

スーツ姿の勝成が入って来た。

勝成と龍成の目が会った。

━━━━バチッ━━

「«た、龍兄‼» どうして??」


アララララ

「勝成こそ?

お前仕事は?」


「龍兄こそ、専務様が何で

ここに、いるんだよっ‼」


「俺は、昼休みだ‼

歯垢取りに来て昼食‼」



「昼食?珈琲だけ?」

勝成はテーブルを見て怪しんだ。


「昼はたべないんだ‼

珈琲飲みに来ただけ‼」


カランカランカラン

次は拓哉が入って来た。

「Σ(꒪ȏ꒪)拓哉、お前もか‼」


☕️ ☕️ ☕️

ひとつのテーブルに珈琲三杯

次いでにイケメン3人


「えっ・・と‼」



長い沈黙・・・

やがて店はピークに突入。

3人は渋々車に戻り仕切り直しを

する事にした。


ライバルが増えれば増える程

オスとしての闘志が湧くもんだ。



しかし3人の前に最大のライバルが

現れた。


3人が車に乗りエンジンをかけた時


ダボダボの見るからに

土建業スタイル


女の子が好きそうな茶髪


身体はしまって顔は甘い

ジャーニー〇系、見るからに

遥かに若い‼

20代前半、ピッチピチピチピチ


男は買い物ブクロ、パンパン❌2

を下げ自転車を押すミクのカゴ

にはネギとセロリが頭を出していた。


2人はイチャイチャしながら

三台の高級車の前を通過‼。


ミクはサラッサラの髪を靡かせて

Tシャツに短パン

可愛らしい足が交互に動く。


仲睦ましく過ぎて行く二人を

3人は(;゚ロ゚);゚ロ゚);゚ロ゚)!

ただ呆然と見送った。



チラッ チラッ チラッアハ・・ハッ

3人は苦笑いも途中で止めて

何も言わず

白、黒、青 と一台のづつ違う方向に

流れて行った。


大大ショック

拓哉も諦めていなかった。

龍成も狙っていたとは・・・

しかもあんな若い男‼


働き盛り年齢突入の俺らには無い

若々しさでミクを満足させたのか?

ピッチピチピチ


会社に帰った3人は、しばらく

鏡を見ながらアッチ向き、

コッチ向き‼を繰り返していた。



拓哉も、まだつきまとってんのか


龍兄もなんだよー


昼食?自分のデパートに有るし

本社の回りにも、食事処や、

クリニックもある、何であんな所

まで行く意味無いだろ!


俺は知っている‼ 穏やかに

見せかけて実は相当な野生を

持つ男だ。


俺の獲物を密かに後ろで爪を立てて

狙っているんだろうが・・・

ガウー(ะ`♔︎´ะ)チッ‼


勝成は💢💢怒り心頭

「さらになんだー💢💢

あの茶髪男は💢💢イライライライラ」


ミクが2人で部屋にいると思うと

気が気じゃない‼


勝成は仕事をパパパッと終わらせ

ミクのマンションまで車を走らせた。

ヤキモチの塊のような勝成は

焦る焦る‼

髪の毛が逆立つほどイライライライラ。



うううーガウ、

他のオスライオンが

俺のテリトリーに入って来たら

戦うしかない。


あんな若いオスにミクを

渡してなるかーガウー 🦁






























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