第76話 イン・ザ・フレッシュ その⑥
076.
一度、身をもって体験している
隕石や人工衛星の墜落とは違う。大気圏に入った時点で影響を及ぼすようなものではなく、触れることで破壊を引き起こす。
それを『破壊』と呼ぶのが適切かどうかはともかく。
それならば……それなら――『能力』が介入する余地があるはずだ。
『能力』――『ザ・ウォール』。
水を操る『能力』――ではなく、回転を操る『能力』。
その『能力』の真価は、さっき身をもって体験している。
『リトル・ピーターラビット』が言った
『宣戦布告』をしたのは、ほかならぬこの『能力』だ。
『おまえたちに刈り取られるだけの生命ではない。既に人類にはおまえたちに対抗するだけの可能性が、こうして存在している』――と。
遥か虚空の彼方に、『宣戦布告』をした。
この『能力』ならば――『一撃』に対抗できるのではないか。
(着弾前に、受け止める……っ!)
今まで水しか操ったことのない響木に、そんなことができるかわからない。
だけど、こんな無茶苦茶な『一撃』を受け止められるのは、今は自分しかいない。
響木寧々は覚悟を決めた。
衝撃を間近で受けた
『向かってくる』以上は、彼女の『能力』――『ロンドン・ブリッジ』が適応するだろうと思っていた。
しかし、通じない。
物理法則とか、そういう領域ではない。
そういう領域ではなく、相剋渦動領域。
もっと深いところにこの『現象』は存在している。
できることと言えば、ここにいる全員が吹き飛ばされて死なないように工夫することくらいだ。
このときの『全員』に響木や
鎮岩こと子は覚悟を決めた。
『一撃目』の衝撃を間近で受けた
物理法則などを無視してくる正体不明の『一撃』に、この『可能性』と呼ばれる因果律に干渉する『能力』は有効だった。
だったのだが……。
これを処理できるだけの余裕が、高砂にはなかった。
ただ受け身になっていた。『降ってくる』『何か』を受けたとき、自分を含めた四人が怪我をしないようする。
そう受け身になっていた。
高砂紫吹は覚悟を決めた。
だから、茄子原の場合、何をするよりも先に塞ぎ込んだ。
周囲の植物を使って、バリケードを作ろうとした。
自分だけを守る要塞を。
ずるずるずるずる! じゅるじゅるじゅるじゅる!
と。
このとき、茄子原は異変に気づいた。
植物の制御が、次々に途切れていく。
周囲の視線は、空に――
響木と、その周囲にいる鎮岩や高砂の三人。すべての視線が、遥か上空に向いている中で、茄子原だけが、別の方向を見た。
『能力』の制御が、次々に途切れていく植物のある方向を。
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