【ショートショート】積み木のおじさん

@kurumipunch

積み木のおじさん

あるところに、積み木を積み上げて作品をつくるのが趣味のおじさんがいました。

 

おじさんはとにかく積み木を積み上げていけば良いものが出来上がると信じていたので、とにかく色んな場所から積み木を買い込んで、ひたすら積み木を積み上げていきました。

 

ある日、積み木を積み上げる作業を中断し、休憩してふと積み上げてきた積み木を眺めてみると、積み木は巨大なクリスマスツリーくらいの大きさになっていました。

 

「すごい…!圧巻だ!今まで積み上げてきたことはやっぱり無駄じゃなかったんだ!」


そう言って、とりあえず記録に残そうと、おじさんは積み木の写真を何枚か撮りました。

 

「これはもっと頑張ればアーティストとしてスカウトされたり、新聞に載ったりするんじゃないだろうか」

そう思っていたら「ぜひうちでも作品を作ってみませんか」と、何人かから依頼の声がかかりました。

 

よーし、このまま頑張ってこれからも積み木を積み上げていくぞ。

 

そう思った時に、ある転機が訪れました。

 

ある日おじさんが一生懸命積み木を積み上げていると、足場を崩して落ちてしまいました。

 

すると、おじさんが転んだ衝撃で、積み木はみるも無残にガラガラと音を立てて辺りに崩れて散らばってしまったのです。

 

相当な量の積み木で、しかも街中で作っていたので、通りがかった人が生き埋めになってしまったり、車が積み木でスリップしていまい、沢山の事故が起きてしまいました。

 

そうなってしまうと、積み木のおじさんの街の評判はガラッと変わってしまいました。街では積み木を積み上げる迷惑者だと非難の目を浴びさせられ、制作の依頼もぱったりとなくなってしまったのです。

 

陥落者にすっかり成り下がってしまったおじさんは、あまりのショックに日々打ちひしがれ、どうすればいいか分からなくなりました。


とにかく、誰でもいいから何か解決を見出してくれる人は居ないかと藻にすがる思いで奥さんに相談すると、奥さんはこう答えました。


「積み木なんてただのガラクタだったじゃない。今更何をあなた言ってるの?」

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