「Fireworks」

街がさざめいている

いつもと違って 街全体が打ち震えているような

時間を追うごとに 力が満ち 何かを揺り動かすような

そんな感じ

年に1度のこの空気が私の気持ちも揺さぶったような

そんな感じ

5年前 10年ぶりに小説を書き始めて勢いづいて書いた「ライゾ」

あの話を書いていた時期もちょうど今頃だった


明日からこの街の祭りが始まる

明日から3日間 祭りが続く

今日はその前夜祭

祭りの気が空にも地上にも渦巻いていて 

この空気の中でバーンは 男の子 に出会った


あの話は最期のシーンが先にあって あとから最初のシーンを追加した

夜 歓声とともに打ち上がる花火が 親子に手向けられた花束のような気がして

地上(下)から花火を見上げているのではなく

天空(上)から花火を見守っている

その視点の映像が初めに私には見えていた

何かに隔てられていた親子が再び「ひとつ」になれる

再会と融合 「ライゾ」の持つ意味の「ひとつ」


今にして思うと現在の私にも繋がっていたのかもしれない

今だからこそ現在の私の何かを暗喩していたのかもしれない

5年前のあの時より「ライゾ」の意味を知った私にはそう思えてならない

内に存在するものの価値が増すこと 

旅の途中で捨て去った過去の重荷にわずらわされないこと

自分自身の力に頼りきるのではなく 

祈りを通してHigher Selfに尋ねてみること

それがこの旅に必要なことである…と



「ねえ、先生?」

「・・・・」

「たっちゃんも、この花火見てますよね」

ようやく綾那に笑顔が戻った。そう願った。

あの子がこの綺麗な花火を見ていてほしいと。

「ああ」

その思いはバーンも臣人も同じだった。

「この空よりもっと高いところから、母さんと二人で見ているさ…」

次々と打ち上げられる花火を見ながら、静かにバーンが答えた。

明日は新月の夜。

真っ暗な空に、いつまでも儚い夢のように花火が上がり続けた。


        from 黄金のオラクル シリーズ RAIDO ACT.4 花火



                  

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