13 帰途



 お兄ちゃんが明久君を殴り飛ばした。

 年上だけあって、お兄ちゃんの方が体が大きかったし、力も強い。


「お前みたいなへたれ騎士が、大事なお姫様をずっと守り切れるわけないだろ」

「守って見せるさ。今度こそはな」


 屋上を去る間際に見せた、決意したお兄ちゃんの顏。

 昔みたいにすごく格好良かった。


 もうちょっと、お兄ちゃんの事信じてあげればよかったな。


 学校の帰り道で、お兄ちゃんの悲鳴が上がる。

 手に湿布を張り直すと、お兄ちゃんが大げさに痛がった。


「いてーっ、もうちょっと優しくして、マイシスター!」

「もうっ、あんな無茶するからでしょっ。保健の先生も、お兄ちゃん見てびっくりしてたよ」

「ははは、つい加減が分からなくてな」


 苦笑いするお兄ちゃんに、私は言わなくちゃいけない事を言う。


「お兄ちゃん、ごめんね。ひどい事言って」

「何言ってんだ。お兄ちゃんは妹のやんちゃを受け入れるもんだろ」

「でも」


 お兄ちゃんは笑いながら私の頭を撫でてくる。


 そして、「気にするなよ。例え誰かに褒められなくても、認められなくても、大切な人が笑ってられるってだけで、頑張れるってもんさ」こんな真面目な言葉を言ってくる。


 柄にもない言葉だ。

 普段のなさけないお兄ちゃんとは思えない。


 あまりにもまっすぐな言葉に、ちょっと照れくさくなってくる。


「お兄ちゃんって、前世でも私のお兄ちゃんだったのかな」

「さあな」

「えっ、さあって?」

「いや、お前もちょっとしか前世の事もわかってなかっただろ。俺もちょっとしか夢にでてこないからさ」

「そっか」


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