13 帰途
お兄ちゃんが明久君を殴り飛ばした。
年上だけあって、お兄ちゃんの方が体が大きかったし、力も強い。
「お前みたいなへたれ騎士が、大事なお姫様をずっと守り切れるわけないだろ」
「守って見せるさ。今度こそはな」
屋上を去る間際に見せた、決意したお兄ちゃんの顏。
昔みたいにすごく格好良かった。
もうちょっと、お兄ちゃんの事信じてあげればよかったな。
学校の帰り道で、お兄ちゃんの悲鳴が上がる。
手に湿布を張り直すと、お兄ちゃんが大げさに痛がった。
「いてーっ、もうちょっと優しくして、マイシスター!」
「もうっ、あんな無茶するからでしょっ。保健の先生も、お兄ちゃん見てびっくりしてたよ」
「ははは、つい加減が分からなくてな」
苦笑いするお兄ちゃんに、私は言わなくちゃいけない事を言う。
「お兄ちゃん、ごめんね。ひどい事言って」
「何言ってんだ。お兄ちゃんは妹のやんちゃを受け入れるもんだろ」
「でも」
お兄ちゃんは笑いながら私の頭を撫でてくる。
そして、「気にするなよ。例え誰かに褒められなくても、認められなくても、大切な人が笑ってられるってだけで、頑張れるってもんさ」こんな真面目な言葉を言ってくる。
柄にもない言葉だ。
普段のなさけないお兄ちゃんとは思えない。
あまりにもまっすぐな言葉に、ちょっと照れくさくなってくる。
「お兄ちゃんって、前世でも私のお兄ちゃんだったのかな」
「さあな」
「えっ、さあって?」
「いや、お前もちょっとしか前世の事もわかってなかっただろ。俺もちょっとしか夢にでてこないからさ」
「そっか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます