願い

青山えむ

第1話 想い

 死んでしまいたい。

 死んでしまいたい。

 死んでしまいたい。

 何度思っただろう。毎日毎日、そう思っている。


 毎晩布団に入る度、死んでしまいたいと願っている。祈っている。


【何故死にたいの?】幻聴まで聞こえてきた。

 毎日が繰り返しだから。仕事は残業だらけ、休日は何もしたくない。

 ただ休んでいるだけの休日。

 リア充はきっと、エネルギー補充をしている休日。

 休日は嬉しいものじゃなくて「仕事に行かなくていい日」、それが私。

 仕事をしているよりはマシな日。

 月曜から金曜まで仕事をして、少しだけホッと出来る土曜と日曜。

 このまま月曜日が来なければいいと、毎週願っている。

 このまま明日が来なければいいと、毎日願っている。


 無情にも朝は来る。

 また同じ日々の繰り返しが始まる。

 朝の繰り返し、出勤の仕度をして出社する。

 毎朝同じ時間に起床、ニュース番組、朝食。

 会社に着くと、始業時間前に仕事の準備をして、始業時間と同時に朝礼が始まる。

 仕事の『準備』も仕事になると思うんだけれど…。

 この愚痴も毎日、同じ事の繰り返し。

 今日は火曜日、まだ火曜日だ。一週間が始まったばかり。

 本当に、長い。


【どんな仕事をしているの?】また幻聴だ。

 製造工場でひたすら同じ作業をするんだよ。

 一日三千回くらい。

 いわゆる流れ作業っていうやつ。

 私は今二十五歳だが、職場には四十代五十代が多くいる。

 つまり、四十代になってもこの仕事をやっている確率が高いのだ。


【何を作っているの?】

 リモコン全般。テレビとか扇風機とかクーラーとかの。


 一日三千回同じ作業を繰り返す。周りに話すとそれだけで引くけれど、それを毎日だからね。

 一週間に五日出勤するから、週に一万五千回、かける…やめとこ。

 計算したくもない。

 テレビだと季節が関係無いから、一年中同じ事の繰り返しだ。

 当然、身体の負担も同じ箇所にかかる。

 指先が痛い人、腕全体が痛い人、右手首だけが痛い人。

 痛いので違う仕事に変えて下さい、と上司に報告すると「他に空きが無いから」と云われてひたすら職場の掃除をさせられる。


 毎日同じメンバーで、同じ場所で同じ作業をする。

 毎日同じ休憩時間と稼働時間、出勤・退勤時間。

 当然のように、帰宅する時間も一緒だ。

 これからは雪が降ると、少し帰宅時間が遅くなるかもしれないが。


 単純作業の繰り返しだから、機械がやった方が効率が良いのかもしれない。

 けれども機械は高価で、雇用も確保しないといけないという理由で人手作業にしていると云っていた。どこまでが本当かは解らないが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る