私たちを隔てるもの(仮)
@strider
第1話 猛反対
ほとんど予想していた通りの結果だった。つまり、最悪な結果になったと言っていい。
ユウを見た両親はしばらく呆気にとられたような顔をしてから、すぐに私を見つめた。
「どういうことなの?」
不安そうに首を傾げる母。自分の予想が間違っていて欲しいと祈るように両手を組み合わせながら、じっと私を見つめる。
「だからね、私、この人と結婚するの」
「だって、そんな……」
母は顔を青ざめさせ、ユウと私を何度も見比べた。
「こんな馬鹿げた話があるか!」
父は汚い物でも見たみたいにユウから目を逸らし、私に向かって怒鳴った。
「どうしてよ」
「結婚なんて絶対に認めんぞ!」
「話をしたときには、二人とも喜んでくれてたじゃない」
「こんなの、話が違うじゃないか!」
「でも、私、嘘なんてついてないでしょ!」
取り乱す父と母に、私も声を荒らげた。そんな私たちのやり取りを、ユウは悲しそうに見ている。自分のせいで親子三人の平和が乱されていると思って、
「ちゃんと祝福してよ。ユウはとっても素敵な人なんだから!」
それは本当だった。
婚約を報告したとき、父も母も、「相手はどんな人なの?」とたずねてきた。仕事は何をしているのか。優しい人なのか。どういう生い立ちで、どういう趣味があるのか。
私はそれに対して、嘘偽りのない答えを言った。
弁護士をしていて稼ぎがよく、優しくて、週末には手料理をご
百点満点かどうかは分からないけど、ユウの人となりは、両親の定めた合格点を満たしていたのは間違いない。父は「まあ、悪くない相手のようだな」と腕を組みながら瞳に涙の膜をつくっていたし、母は「会うのが楽しみだわ」と嬉しそうに顔をほころばせていた。
ところが、初めての顔合わせでユウを見るなり、両親は態度を豹変させた。私とユウは理解を求めて説明したけれど、父も母も聞く耳を持たずで、「どうかしている」とユウを罵りだす始末だった。
「話にならん。悪いが出て行ってくれ!」
父は苦々しく顔を歪めながら、ユウを追い出した。
すみませんでした、とユウは消え入りそうな声で言い、力なく肩を落として部屋を出て行った。私は崖から突き落とされたような気持で、ドアが閉まるのを見ていた。いままで私を愛し育ててくれた両親が、自分の愛する人を傷つけたのが悲しかった。
太い尻尾を地面に擦りつけているかのような重たく乾いた音がゆっくりと遠ざかってゆく。うつむきながらユラユラとすり足で歩き去るユウの姿が目に浮かぶようだ。その音が止むと、玄関の戸が開く音が聞こえた。
「待って、ユウ!」
戸がピシャリと閉まった音で私は我に返り、ユウを追いかけた。
「待ちなさい、話は終わっていない!」
後ろから父の声が聞こえるけれど、取り合っているヒマはない。このままユウと離れてしまったなら、それはきっと
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