第3話 親友。

「あ、こんな所にいた。メイド長様がお呼びよ。アリア」


 あ、アリサ。


 メイド仲間で親友のアリサがそうこちらに気がついて声をかけてくれた。


 この子がまたかわいいんだよね、金色の髪の毛がふわふわと綿菓子みたいで、くりんとした青い目で。

 まるでわたしが覚えてる王子様を女の子にしたみたいな子。

 一年前、わたしがここに引き取られてメイド見習いになった時、偶然? なのかこのアリサもちょうどこちらにメイド見習いとして入ったばっかりだって言ってた。下級貴族の出なんだよって聞かされたけどそうは見えないくらいお姫様っぽく見える。


 まあ、クローディアお嬢様の遊び相手として選ばれたっていうのが本当のとこなんだろうなぁって思うけど、わたしにもほんとうによくしてくれて。

 すっかり仲良しになったのだ。


 わたしは唯一の親友、って思ってるんだけどね。


「ああ。もうお小言の時間なのかなぁ……」

 そうちょっとため息をついて。


「あは。また何かしたのー?」

 コケティッシュに笑う顔もまたかわいい。


「ちょっと花瓶倒しちゃったとこお嬢様に見られちゃって。メイド長に言いつけるって言われてたの」


「え? どこ?」


「もう片付けたよ。割れてもないし何処にも被害はなかったから」


「ならそんなに怒られないかもだよ。それより聞いた? お城でお茶会が開かれるんだって。王子様主催の」


 え? 王子様……?


「リカルド王子。黒髪でイケメンよ。頼れるお兄様。そんな感じでいい人だから」


「え? アリサは良くしってるの?」


「んー、貴族の女子の中では有名なんじゃないかな。優しくてお強いの。騎士団も統率されてるはずよ」


 そっか。わたしの王子様とは違う人だね。


「もう明日なんだけどね。お嬢様も今年はお披露目の年でしょ? このお茶会から社交界デビューする予定なんだけど、お付きのメイドの人選で揉めててね」


 揉めてって。そんなのアリサ一択でしょー。


「そんなのアリサ一択じゃないの? 」


「ああ、あたしはダメなんだ。実家でちょっと用事があってその日は帰らなきゃなの」


「それって、お嬢様怒ってるんじゃない?」


「怒ってたけどしょうがないよー。宥めておいたけどね」


 まあ、でも、それなら揉めるよねー。


 お城でしょ? そこそこ見栄えが良くてそんでもってお嬢様引き立てる様な若いメイド……、心当たりないや。


「年配の方々しか居ないもんね今。それは揉めるかも」


「ふふ。揉めてる原因はそこじゃないんだけどね。まあいいわ。ほら、早くメイド長の所行った方がいいわよ。待ってるから」


 謎の微笑みでウインクするアリサ。同い年とは思えないよ。


「うん。ありがとうアリサ。行ってくるね」


 あーあ。気が重いなぁ。

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