黒ねこの雪の花

宮下ほたる

第1話

 鬱蒼と茂る森のように暗い空は、今が昼間だということを意識しないと気づけないような、それこそ時間がわからなくなる、そのくらい重く厚い雲が広がっていた。


 灰色のソラ。暗い丘。


 誰も来ない、みんな知っているはずなのに、誰一人としてくることのない秘密の丘。

 ここは私とルーンだけの秘密の場所。


 私たちが初めて出逢ったところ。


 丘の頂を少しすれたところに突き立った小さな棒切れ。そこに書かれていたはずの文字は、雨風にさらされてにじんでしまっている。何が書かれているのかは、元の状態を知らない人には読めないだろう。


 墓標になったその棒切れの前に座り込む。

 私がこれを読めなかったら彼は泣くだろうか?

 そんなことを考えながら寝転がった。

 だってこれを書いたのは他ならない私なのだから。

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