異世界誤召喚！？ 城魔法スキルで実家と共に異世界漫遊

第60話 二次魔法？

「セシル。虹魔法って知ってる？」

　一先ずトパーズが使えるようにしてくれるはずだった、聞き慣れない虹魔法が何なのかと聞いてみたのだが、

「うーん……ごめんね。どこかで聞いた事があるような気もするんだけど、思い出せないや」

　セシルでも詳細を知らない魔法らしい。

　一応アーニャにも尋ねてみたが、やはり知らないようだ。

　とはいえ、使えない元の虹魔法が何かよりも、俺が使えるようになった二次魔法とやらの方が重要だ。

　出掛ける準備を済ませて皆で外へ出ると、周囲に何も無い事を確認し、

「トレース！」

　早速二次魔法を使ってみた……が、何も起こらない。

「あれ？　これは倉魔法と同じパターンか？」

　倉魔法「ストレージ」を使用した時も、最初は何も起こっていないように見えた。

　実際は魔力の塊が生み出されていて、そこから空間収納を使う事が出来たんだけど……

「本当に何も無いな」

　セシルとアーニャにも周囲を調べて貰ったものの、本当に何も無い。

　そもそも、セシルに言わせると魔力が放出された気配がないそうだ。

　魔力うんぬんについては、俺にはよく分からないけれど、セシルが言うのだから間違いないのだろう。

「うーん。どうやら二次魔法は、ハズレスキルっぽいな」

「ボクとしては、妖精さんに貰ったスキルだから、そんな事はないと思うんだけど」

「何か発動条件があるんじゃないですか？　例えば……二時になったら使えるとか。二次だけに……な、何でもないですっ！」

　アーニャ……言って恥ずかしがるなら、言わなければ良かったのに。

　けど、アーニャの言う通り、発動条件というのはあるかもしれない。

　お医者さんごっこスキルの「診察」だって、相手の胸を触らないと発動しないしね。

　とはいえ、二時にしか発動しないスキルだとしたら、使えないにも程があるけど。

「とりあえず、二次魔法の事は一旦置いといて、次の街へ行こうか。いよいよ商人ギルドの本部がある街だ。きっとアーニャの家族の情報だってあるはずだ」

「はいっ！　お願いしますっ！」

　ヂニーヴァの街行きの乗合馬車へ乗り、再びカタコトと馬車の荷台で揺られながら街道を進む。

　大きな街への街道という事もあって、魔物も現れないし、山賊なんかも出て来ない。

　かなり揺られて、茜色の日に照らされ始めた頃、遠くに大きな壁が見えてきた。

「ヂニーヴァの街だよ。この馬車はここが終点だから、全員降りてくれ」

　街の中の乗合馬車の停留所へ着く頃には、日がすっかり落ちてしまったので、先ずはいつも通りに街の外で一泊しようと思ったのだが、

「あ、あのっ！　先ずはギルドで家族の情報が無いか聞いても良いですかっ！？」

　今までずっと我慢してきたのだろう。

　アーニャが抑えきれないといった表情でギルドへ行きたいと言ってきた。

　ギルドまでの道も分からないのだが、アーニャの気持ちは痛いほど良く理解出来る。

　俺だって、久々に実家へ帰って来て誰も居なかった時、焦りまくったもんな。

　セシルに視線を送ってみると、大きく頷いたので、先にギルドへ行く事にした。

　日が落ち、魔法による灯りで照らされた道を三人で歩いているのだが、

「この街……ちょっと広過ぎない？」

「そ、そうだね。ボクもそう思うよ」

「むー。せっかく辿り着いたのにー」

　商人ギルドの建物が一向に見当たらない。

　街を歩く人も少なくなってきているし、女の子二人を連れて出歩くような時間では無くなりつつある。

「アーニャ。一先ず完全に日が落ちているし、今日は街の中で宿を取って、明日またギルドを探そう」

「……わかりました。仕方ないですね」

　アーニャも納得してくれたので、ギルド探しから一転して今度は宿探しへ。

　街の外なら城魔法を使って無料で泊まれるのだが、また同じ道を戻るのは辛い……って、どうやって歩いてきたっけ？

　アーニャが獣族の勘に任せてくださいっ！　って言いながら先頭を歩いていたけれど、現在地がどの辺りか分かっているのだろうか。

「アーニャ。今って、街のどの辺りなんだ？」

「えっ？　そんなの分かりませんけど？」

　おぉぅ、マジかよ。

　最悪、広めの場所があったら、街の中でも城魔法で家を出そうかと考えていると、

「おっと、こんな夜更けに女の子が出歩くなんて……悪い子だなぁ。オジさんが家まで送ってあげよう。さぁついて来なさい」

「ちょ、ちょっと！　やめてくださいっ！」

　アーニャが酔っ払いらしきオッサンに絡まれてしまった。

「失礼ですが、彼女は俺の連れです。離してもらえませんか」

「んぁ？　なんだ、てめぇは！？　俺は、こっちの女の子と喋ってるんだよ。若造は引っ込んでろ！」

　いや、若造って。

　俺もアンタと同い年くらいだろうが……と思っていたら、アーニャを庇うようにして割り込んだ俺に、オッサンが殴りかかってきた。

　とはいえ、酔っ払いの拳だ。しっかりガードすれば大丈夫だろうと思っていると、

「うひぃぃぃーっ！」

　突然オッサンが変な声と共に目の前から消える。

「お兄さんに危害を加えようとする人は、許さないんだからっ！」

　どうやらセシルが突風を起こして真横に吹き飛ばしたらしく、路地に向かってオッサンがゴロゴロと転がって行った。

　……セシルが竜巻で上空に吹き飛ばさなくて良かったよ。