4. 違う未来
それは一瞬の出来事だった。
とてつもない揺れが起き、なつきの家を廃材の山に変えた……
なつきの、俺にとっても親族である
いくら地震の少ない福岡の建物だからといって、あまりにも倒壊するのが早い。
いや、これは地震とは別なシロモノなのだろう。
それは先程から騒がしくしている俺の魂が訴えている。
そして、これらの原因は教えられるまでもなく分かっていた。
「とん吉! 俺はオッサンだぞ!」
「!!」
俺が叫んだ瞬間に揺れは収まり、1メートルほど浮かされた体が落ち、尻餅をつく。
俺は直ぐになつきが無事か確認する。
振り向くなり、背筋が凍りつく。
ぐらり……
なつきの近くにあるブルドーザーがあり得ない角度に傾きぐらついた。
まるで片輪走行でもしている様だ。
俺はまともに声も出せず、奇声を発しながらなつきを掴んで力任せに引っ張った。
「い、痛い!」
最後は放り投げるように一緒に転がると、先程なつきが膝をついていた場所に重機が横倒し地響きをあげた。
3人はゾッとしてブルドーザーを見詰めたが、
「ばあさん!」
俺は立ち上がって元家だった残骸の山に駆けた。
「おばあちゃん!」
なつきも慌てて駆け寄り、婆さんが居たであろう辺りの廃材を
だがかつて建築資材だった物は様々折り重なって、とてもじゃないが少女にどうこう出来るわけがない。
「なつき、うちに行って母ちゃんに話してくれ」
「嫌、嫌よ、おばあちゃん」
「俺とコジローが木を退かしてるから、早く応援を呼べ! 間に合うかもしらんだろっ!」
「う、うう、うん」
なつきは泣きながら、俺のうちの方向へ走って行った。
俺んちの回りには、鏡家や栗原家など数軒ある。
男手があるかもしれない。
向こうの家屋が無事であってくれればいいが。
「コジロー、たのむ」
それまで少しでも、木片でもいいから取り除いておきたい。
ーーーーーーーーーーーー
やはりアレは特殊な力だったみたいで、俺んちの辺りにはそれほどの被害はなかったそうだ。
まあ揺れは大きかったとの事で、ちょっと散らかったり、コケて打ち身になった者がいる位だ。
夕方なので、土方仕事に行ってた近所のおっちゃんが帰ってて2人。
うちの母含む主婦連のママさん婆さんが5人駆けつけてくれた。
必死な救助活動の甲斐もなく、日の沈みきった頃……
そう長い時間をかけずに、
間違いない。
この世界は変わる。
俺の知る世界とは別物になってしまう。
そして下手をすれば……
世界は消滅してしまう。
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