番外編 あの時こうしとけばというターニングポイントに戻れるとしたら君ならどうする? ただし、性別変わるけど。

KUZ

番外編1話

1. 帰還出来ず?

 俺の意識がだんだん薄れていく……


「ともか!」


 なつきが俺の両手を握りしめてくれるが、変わらない。

 遠くに、遠くに、行こうとする。


「なつき! 愛してる!」


「ともか! 僕もだ! 愛してるよっ!」


 握った手の感触も、必死な形相のなつきも、遠く、遠くに離れてしまい。


 俺の意識は途絶えていった。


 …………………………………………………


 ………………………………もか…………


 と……もか…………ともか…………


 なにか聞こえてくる。


「ともかっ、ともか!」


 暗闇からなつきの声が聞こえる。


「なつきっ、なつきか?」


 だんだん頭の中の暗闇が晴れ、失っていた体の感覚も蘇ってきた。


「ああ! ともか、ともか」


 なつきが俺を強く抱きしめてくれる。

 

「そうか……

 戻れなかったのか……」


 どうやら俺は元の世界に帰る事は出来なかった様だ。

 まあ、それはあくまで葉月と俺が勝手に考えていた可能性の話だった。

 あの方こと、なつきからハッキリ言質げんちをとった訳ではない。

 こうなる結果も十分あり得たのだ。が。


 そっかああああああ……


 すっごい悩んで、あきらめて、決心したのは何だったのか。

 葉月にも、母ちゃんにも、とん吉ヤスコにも恥ずかしいとこ見せて。

 今抱きしめてくれてる……なつき君にも……うううううう、恥ずい。恥ずすぎるうう。


 だんだん視力が回復し、ボンヤリなつきの顔が見えてくる。

 涙顔の美少年がほほえんでいる。

 

 そうだな。

 帰れないのなら仕方がない。

 この愛する人とまだ同じ時間を共有できる。

 長くても40までではあるのだが……


「ともか! ともかよね。

 帰ってないんだよね!」


「ああ……」


「ああ、本当に、本当に」 


 ん?

 なんだろう、この違和感。

 何かしっくりこない。


「そうだ、俺だよ。なつき」


「え? 俺?」


 なつきの顔に疑問符が浮かぶ。

 そのなつきを見て、俺の違和感も大きくなる。


「と、ともか?」


 なつきは少し力を緩め気持ち体を離した。


 ムニュ。


 俺の肩辺りになつきの胸が当たっている。

 柔らかい。

 けして豊かではない膨らみかけの胸だが、しかし確かな少女の胸が当たっている。


「「!?」」


 そして俺の胸に当てた手の感触で驚くなつき。

 俺自信も触られてそれに気づいた。


「「お、女の子!!」」


 なつきも俺も……女になっていた。

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