クロスワールド

髙﨑 レイ

第1話 プロローグ

 50年前。

 世界に突如として現れた境界門。それは地球という世界に滅びをもたらした。モンスターが現れ世界中をダンジョンが蹂躙した。突如として現れた災害に世界は終わった。


 …かに思えたのが境界門の先の異世界グランディウスと繋がり地球にスキルや魔術をもたらし滅びから立ち直ったが再び冷戦状態に陥りグランディウスの国々と独自に同盟を結び各国は牽制をしあった。


 それがこの歪んだ世界の始まり。そしてとある少女と青年たちの物語。





青年が長い廊下を駆けつつ後ろを振り返らずに銃を背後の黒づくめの男に向けて発砲。放たれた光弾は黒づくめの男に着弾し男が崩れる。だが青年は振り返りもせず腕を突き出し魔法・・を唱える。

「炎よ来れ 紅蓮の業火 カース・フレイム」

 圧縮された魔法陣から赤き炎が放たれ奥の壁に到達するまで一続きで焼き尽くす。黒づくめの男の服にはスペルシールという防護魔術が付与されているが魔法を無力化できるほどではない。さらに言えば青年は魔法の発動の瞬間ちょっとしたズルを行なっており威力としては申し分がなかった。

『作戦終了。情報の接収に成功。総員ただちに帰投せよ』

 イムカムから司令部より命令が下る。青年の仕事としてはここからがメインだ。近くの窓から飛行魔法を使用して襲撃した建物のおよそ20mほどの上空へと上がる。そして太腿のホルスターから先ほどとは別の銃を抜き撃つ。

「ギガエクスプロージョン」

 呟くように唱えられた無慈悲の声音が鍵となりてその施設を壊滅させる。たった一撃。ただ一撃が彼に求められた仕事。先ほどのような撹乱は必要ない。

 ゆっくりと崩壊しゆくその光景を見つめる双眸は右は蒼く三日月が左が紅く炎が煌めいていた。


 机を挟んで向こうの豪華な椅子に座る人に話しかける。

「陛下、用事とは?」

「来てくれたかねすめらぎくん。先日は陽動と施設の破壊ありがとう」

 この部屋は暗くてよく様子は窺えないが多分チェシャ猫のような笑みを浮かべているだろう。

「別に感謝されることでも。あの外道連中ですから。まさかそれだけのために?」

 心底呆れた様子でそう返すと予想外の答えが返ってきた。

「君にちょっと頼みたいことができたのでね」

 僕…すめらぎ 理玖りくは緊急招集用の連絡にて陛下と慕われる人物の元を訪ねていた。

「頼み事ですか?命令ではなく?」

 怪訝そうな表情をして訪ねる。陛下には僕に対しては3回分の命令権を持つ。なので何かをさせようと言うのならそっちを使えば良いはずだ。

「いや私は仲介だからね。それに命令ではないのは君にもメリットがあるから勿体無い」

「なるほど。効率重視の陛下ならそうでしょうね」

 3回分の命令権は僕に対しての貸しがあるからだ。それを無駄にしまいとするのはあり得なくもない。

「さて頼み事なんだが」

 資料を手渡される。見るに生徒の資料だ。軽く見通し強く見返す。

「見るに暗殺依頼でも?」

「逆だよ。その娘の護衛」

 護衛?

「彼女の両親ならそれなりの戦力を有しているはずですが?」

「思ってだって動けないのだよ、複雑だからね」

 それも想定内だ。でも裏の人間もいるはずだ。それともそれだけじゃあ守れないのか?どちらにせよ

「僕へのメリット及び報酬その他は?」

 護衛というのならそれなりの条件を話し合う必要があるし時間拘束もあるから無償で引き受けるわけにもいかない。

「学園への編入と月40万円で寮の個人部屋というより護衛対象の隣の部屋。失敗しようが関係なし。時期は未定。物資・前金として最初が50万で次からは10万」

「受けましょう」

 充分すぎるな。護符などもそれなりに使えるし。学園への編入が一番嬉しかったりするが。

「ではよろしく頼む。依頼主にはこちらから連絡をしておく」

「分かりました。僕はこれで」

 結局、この秘密の会合で一度も笑みを崩さなかった陛下の元を辞した。

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