ネリネ

ゆにえもん

第0話 プロローグ

『魔導回路回復率、38%』

 暗がりに包まれた小さな研究所内で、無機質な機械音が響き渡る。魔法駆動式機械オルガンのキーボードを叩くと、目の前のモニターには、隣のポッド内で横たわる魔導人形の顔、姿形、製造日や型番、そしてデータ修復率が表示された。

「ネリネ……いつになったら、君は目覚めるんだ……」

 培養液で満たされた容器の中で、安らかに眠る魔導人形の女性――ネリネに問いかけるも、彼女は未だ何も答えない。

 虚しさと悲しさが胸に溢れ、年甲斐もなく泣きそうになるのを必死で堪えつつ、今は彼女の回復に専念する。

 生みの親であり、思い人であり、そして――全ての元凶たる俺自身の役目でもあるのだから。

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