44.2 薫と音楽会

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 そのころ薫は14,5歳になっているんだけど、歳よりは大人びていて素晴らしい青年に成長していたから玉鬘はうちの婿になって欲しいわなんて思い始めたのね。

 薫の実家の三条邸と玉鬘のお屋敷は近所だったから薫もよく玉鬘の息子たちに誘われて遊びに来るのね。年頃の娘のいるお屋敷だから大勢男子たちが訪ねて来るんだけど、見た目の美しさも感じのよい性格も薫を超える人は誰もいないみたいね。

 玉鬘にしても源氏にはとても大事にしてもらったから薫のことを弟のように親しみを持っているの。


 お正月に夕霧や紅梅が息子たちを連れてきてくれるんだけど、彼らが帰ったあとに薫が訪ねてきてくれるの。夕霧の息子たちも家柄もいいし綺麗な公達だけれど、薫の美しさは群を抜いているみたいなの。女房たちもきゃあきゃあ盛り上がっていて、

「やっぱり姫様には薫さまのお隣がお似合いだわ」

 なんて言っているんですって。とにかく薫と話をしたい女房達が次々話をふるんだけれど、薫の反応リアクションはイマイチなのよね。

 夕霧は年をとればとるほどに源氏にそっくりになっていくけれど、薫は見た目は違うけれど、雰囲気オーラが源氏に似ていてきっと源氏の若い頃は薫のようだったんじゃないかしらって薫が帰ったあとで玉鬘はそんな風に女房と話しているの。女房たちもあたりに漂う薫の残り香でまだ盛り上がっているのよね。


 薫は周りからカタブツ呼ばわりされるほどの超生真面目オトコ。でもあんまりにもカタブツ扱いされるのも面白くないので、ちょっと気取って玉鬘のお屋敷に遊びに行くことにするの。梅の花の季節みたいよ。

 お屋敷の入り口で夕霧の息子の蔵人少将と鉢合わせるの。お屋敷から楽器の音が聴こえてくるからひょっとして玉鬘の長女が弾いているのかもって立ち聞きしてたんですって。玉鬘からは認めてもらってないから望み薄だろうになぁって薫は同情しながらも彼と一緒に敷地を進むの。薫が歌を口ずさみながら歩いて行くと、お屋敷から聞こえる演奏が薫の歌にぴったり合っているんですって。薫も気分がノッてきてこの前のお正月とはうってかわって冗談なんかも言ったりするの。


 お屋敷に来た薫に玉鬘は和琴を弾いてとリクエストするの。薫の爪弾く琴が玉鬘の実の父(元頭中将)の音色にそっくりなのね。でもそれ以上に柏木の音色そのまんまに聞こえてきて、玉鬘は思わず涙ぐむんですって。

 何をしても薫が注目の的になってしまうので、夕霧の息子は自分がふがいなくて落ち込んじゃうの。


 ~ 人はみな 花に心を 移すらむ ひとりぞまどふ 春の夜の闇 ~

(みんなが薫に夢中だから僕はひとりで春の闇を彷徨っているんだ)


 翌朝、薫は音楽会の御礼に和歌を送ってくるんだけれど、玉鬘の姫君への想いがほのめかしてあったみたいよ。


 ~ 竹河たけかはの はしうちいでし 一節ひとふしに 深き心の 底は知りきや ~

(あの夜に謡った竹河の歌詞のように僕の気持ちを知っていただけましたか?)


 この日以来薫は玉鬘の息子のところによく遊びに来て、姫君のことを気にしだすの。そして、玉鬘も薫が我が家の婿に来てくれないかしら、相手は誰がいいかしら、なんて考えているんですって。





To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

 ~ 竹河たけかはの はしうちいでし 一節ひとふしに 深き心の 底は知りきや ~

 薫が玉鬘に長女のことを想って贈った歌


◇「薫くんの琴の音色が内大臣や柏木に似てるってすごくない? 直接教わっていないのに」

 源氏物語ではさりげなく「遺伝」が語られているようです。源氏の真実の子の冷泉院は源氏から絵の才能を受け継いでいますし、薫は琴の名手の内大臣(真実の祖父)や柏木(真実の父)の横笛の才能が伝わっているそうです。


「薫くんがステキすぎて蔵人少将くんがちょっと可哀想?」

 夕霧と雲居の雁の子供ですね。

「夕霧くんに似てればイケメンくんだよね。でも薫くんには敵わないのかな」





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44.3 悩める玉鬘

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