第二部 さくっとおさらい

topics2 ジェットコースタームービー?!

 ここまでお読みくださり、ありがとうございます。 

 前エピソードで第三十四帖【若菜上】から第四十一帖【幻】までの「源氏物語」第二部が終わりました。驚愕の表現方法の【雲隠】もありましたね。全五十四帖ですから54分の41が終わりました。大長編物語も残すところ13巻です。


 どうでしたか?

「源氏亡くなっちゃったね」

 タイトルだけでの表現という驚きの手法でしたね。

 紫の上の死後の源氏の哀しみ様は1巻を割きましたが(第四十一帖 幻)、源氏の死は本文すらありませんでした。

「本文なしってすごい演出だよね」

 想定外の第二部の終幕でした。


「第一部とは全然違う感じだった」

 登場人物も舞台もほとんど変わらないのにストーリーの展開はまったく違いましたね。


 さっくりおさらいしていきましょうね。



◇登場キャラ

 朱雀院 源氏の兄。出家の際に娘の女三宮を源氏に嫁がせる。

 紫の上 誰もが認める源氏がイチバン愛しているオクサマ。六条院春の御殿主。源氏に翻弄され傷つけられ、それでも添い遂げる。故人。

 女三宮 朱雀院の三女。源氏に嫁ぎ正室となるが、柏木と関係を持ってしまい薫を出産。その後出家。

 朧月夜 源氏の元恋人、朱雀院の寵妃。源氏とも復縁。その後朱雀院の後を追って出家。

 六条御息所 源氏が若い頃つきあったセレブ未亡人。故人。怨霊となって紫の上や女三宮を呪う。

 花散里 夕霧や玉鬘の母親代わりを頼むなど源氏の信頼大。六条院夏の御殿主。

 明石の御方 明石中宮の実の母親。六条院冬の御殿主。明石中宮や皇子たちを後見。


 冷泉帝(院) 源氏と藤壺の宮の子。表向きは桐壺院の子。陰ながら源氏を父と慕う。

 夕霧 源氏と葵の上の子。初恋の雲居の雁と結婚するが柏木の未亡人とも結婚。

 雲居の雁 頭中将の娘。幼なじみの夕霧と結婚するも夕霧の恋愛沙汰で別居中。

 明石中宮 源氏と明石の君の子。紫の上に育てられ入内。皇子や内親王を産む。中宮となる。

 玉鬘 頭中将と夕顔の子。源氏の養女。髭黒右大臣夫人。


 柏木 頭中将の長男。女三宮と密通し、罪の意識から病に倒れ死去。

 女二宮 朱雀院の二女。柏木の未亡人。夕霧と再婚。


 匂宮 明石中宮の三男。祖母の紫の上に可愛がられる。

 薫 柏木と女三宮の不義の子。表向きは源氏の二男。


 光源氏 愛に飢え、愛を求め続けた愛の放浪者。故人。



****************

◇超ざっくりまとめ

 ☆絢爛豪華、波乱怒涛。主役の中の主役!

 物語の主役。光源氏。出世を極めて准太上天皇(天皇の次にエライ人)まで上りつめました。東京ドームよりも大きい大豪邸六条院を造営して栄耀栄華を謳歌しました。けれどもおとぎ話のように「幸せに暮らしましたとさ」で終わらないのが『源氏物語』

 愛を求め、愛に溺れ、愛に裏切られ、愛を失う波乱怒涛の晩年を過ごしました。


 ☆当時の理想の女性像? 源ちゃん最愛の奥さま。

 源氏が少女の頃から育てた紫の上。優しく賢く美しく、非の打ちどころのない理想の女性として描かれています。「恋愛体質」の惚れっぽいダンナに傷つけられ、絶望もしましたが最期まで添い遂げました。

 夫の源氏だけでなく人を想い人を愛した彼女は養女の明石中宮はじめ周囲の人すべてから慕われ敬われました。夕霧の憧れの人でもありましたね。彼は誰かさんと違って行動には出ず気持ちの上だけで紫の上を慕いつづけました。


 ☆源氏のオンナ版?! 

 第一部では春宮妃でありながら、東宮オットの弟の源氏とのアバンチュールな恋を楽しみ、そしてその関係がバレたことで源氏を謹慎させた張本人、朧月夜。

 第二部ではそのオット朱雀院が出家して独り身に戻り、源氏とあっさり復縁。しばらくセフレ状態を続けてその後出家。女子だけれど自分で恋しい人を見つけ、自分に惚れさせ、バッシングを受けながらも後宮では帝の寵妃でありつづけ、その後も恋を満喫してから自分のタイミングで出家。「自分らしい生き方」を貫いた女性ではあります。それはそれは紫の上を苦しめましたけれどね。


 ☆第二部のある意味主役

 朱雀帝の娘で彼女が源氏にお嫁入りしてきたことで数々のドラマが巻き起こりました。自己主張がなく、おっとりゆったり過ごしていたいだけだった女三宮。それなのに絢爛豪華な源ちゃんの六条院に嫁がされ、礼儀作法、和歌、琴など源氏塾でしごかれたかと思えば、夕霧の友達の柏木からの執拗なストーカー行為を受ける羽目に。とうとう襲われてしまい罪の子薫を出産したあと出家してしまいました。


 ☆第三部への橋渡し役?  

 今までは源氏の息子夕霧の友人で夕霧のヨメの雲居の雁ちゃんの兄というポジションであまり目立たないサブキャラだったのに、第二部で準主役に躍り出たかと思えば物語の流れを激流に変えてしまった柏木。天下の光源氏の正室という立場の女三宮に数年に及んで横恋慕したあげくの強行突破。密通が源氏にバレていびられ、女三宮の出家に絶望して死んでいきました。「身を焦がすような恋」はよく聞くけれどこちらは「身を滅ぼした恋」でしたね。


 ☆株価大暴落?! ブルータスお前もか(泣!)

 第一部のフィナーレを飾った「幼なじみハツコイ婚」の主役の夕霧。あれから10年。雲居の雁とのあいだに8人(!)もの子供に恵まれて幸せに暮らしていると思っていたら、親友柏木が「俺のヨメさんヨロシク」なんて言い残していったからさあタイヘン。最初は友人として未亡人の女二宮をフォローしてあげていたのがいつのまにやら恋してしまい、女二宮は拒否っているのに再婚してしまいました。これに怒った雲居の雁は実家に家出。初恋の幼なじみひとすじで純愛キャラだった夕霧の再婚騒動に「夕霧株」大暴落、ストップ安! でしたね。



 以上が『源氏物語』第三十四帖【若菜上】から第四十一帖【幻】(雲隠)までのざっくりおさらいでした。この部分を三部構成の第二部として区分しているようです。(諸説あり)


 それから第二部の特に前半は朱雀院の出家というひとつの出来事が次から次へと派生して波乱怒涛の展開でした。フローチャートでまとめてみました。


 ☆第二部「幾重にも広がる恋の水紋」一滴の雫フローチャート

  一滴の雫 朱雀院の出家

  最初の水紋 女三宮が源氏のところに降嫁

  第二の水紋 源氏、元カノ朧月夜と復縁

  第三の水紋 紫の上の絶望&出家願望

  第四の水紋 柏木の横恋慕

  第五の水紋 紫の上病に倒れる

  第六の水紋 柏木と女三宮の密通&妊娠

  第七の水紋 源氏怒って柏木をいびって病気

  第八の水紋 薫誕生&女三宮出家

  第九の水紋 柏木死去

  第十の水紋 夕霧、柏木の未亡人に恋

  第十一の水紋 夕霧、女二宮と再婚

  第十二の水紋 雲居の雁、夕霧の再婚に抗議の家出

  第十三の水紋 紫の上、天国へ

  第十四の水紋 後悔しまくりの源氏

  第十五の水紋 衝撃の表現方法、源氏よ永遠なれ


 ものすごいエピソードの連鎖でしたね。


 次から次へと巻き起こるエピソード、まるで連ドラのような展開でした。

「え? ええっ! えぇぇぇぇ!! って感じだったね」

 こまちちゃんの独特表現ですが、わからないでもないですね。


「夕霧がねぇ……」

 こまちちゃんお気に入りの夕霧の結婚騒動ですね。拗ねて家出した雲居の雁ですが、第三部でちらっと登場します。夕霧と暮らす三条の家に戻っているみたいですよ。


「源氏も紫ちゃんも亡くなっちゃったね。ひとつの時代が終わったって感じなのかな」

 そうかもしれません。栄耀栄華を極めた源氏でしたが生きる辛さも味わいました。天皇に次ぐ位の源氏から最も愛された紫の上でしたが、幸せなだけの人生ではありませんでした。


「源氏物語って最初はモテモテイケメン男子がたくさんの女の子とつきあった話、くらいにしか思っていなかったけれど、それだけじゃないんだね」


 当時の仏教思想が深く反映されているとも言われているそうです。


「たくさん登場するキャラの個性が豊かだよね」

 そうですね。ひとりひとりに性格や得意なことなどが設定されています。源氏が絵の才能があるので冷泉帝も絵画に造詣が深いとか頭中将が琴の名手なので息子の柏木は笛の才能があるなど、です。


 次話第四十二帖から第三部に入ります。源氏亡きあとの「源氏物語」です。


「源氏のいない源氏物語かぁ。どうなるんだろう。想像つかないなぁ」

 源氏最終章となる第三部。この「1000文字源氏物語」も3月のエンディングに向けての更新となります。


「ここまで来ると終わっちゃうのが寂しいけれど、全力で渚ちゃんの応援するからね!」

 頼もしいこまちちゃんのサポートです。読み手の皆さまが閲覧しや応援、コメントは何よりのモチベーションです。


「皆さまも第三部もどうぞよろしくね!」


 よろしくお願いいたします。


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第三部 激しく流れる恋の川

episode42 ふたりのイケメン   匂兵部卿

42.1 新しいかおり

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