38.2 もの想う秋の十五夜

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 十五夜ということで源氏の弟の蛍兵部卿宮が源氏の所にやってくるの。夕霧も一緒で琴の音色を聴きつけて来たみたい。他にも貴族たちが集まってお月見と虫の音を愛でる宴会になるの。

 こんな宴には柏木がいてくれたら華やかだっただろうなと源氏が懐かしむの。今の台詞を御簾の内の女三宮はどんな想いで聞いているんだろう、とも源氏は思うの。こんな音楽を楽しむ夜にはみんな柏木を偲ぶのよね。帝でさえも何かの折に柏木を思い出されているいみたい。

 そんなところに冷泉院からの御使いが来るの。


~ 雲の上を かけはなれたる 住家すみかにも 物忘れせぬ 秋の夜の月 ~

(退位して宮中からは離れたけれど、ここも秋の月が照らしているよ)


 退位して重責から解放されて悠々自適に暮らしていらっしゃるのに、そういえばご挨拶にも行っていなかったと皆で冷泉院のお邸に移動することにするの。


~ 月影は 同じ雲井に 見えながら わが宿からの 秋ぞ変はれる ~

(冷泉院は昔も今もお変わりありませんが、わたしの方がすっかり変わってしまいました)


 そんな歌を詠んで訪ねてきた源氏たち突然の来客を冷泉院は喜んだの。整った美しい顔立ちの冷泉院はますます源氏とそっくりになってくるの。漢詩を詠んだり、音楽を演奏したりして源氏達と楽しい夜を過ごしたみたいね。


 翌日、源氏は秋好中宮のお部屋を訪ねるの。周りの人たちが次々に出家をするので、中宮さまも出家をして母親の六条御息所の供養をしたいと話すの。源氏もお考えは尊重するけれど、急がず準備すればいいと伝えるのよね。

 源氏も秋好中宮も身分が重くしがらみがいろいろあって、簡単には出家をできそうにないのね。だから供養だけでもということで六条御息所の法事をすることにしたみたいよ。


 朝になって源氏は六条院に帰りながら自分の子どものことを想うの。

 大切に育てた明石の女御は素晴らしい女性に成長したし、夕霧も立派でふたりとも愛しているけれど、冷泉院のことはふたり以上に特別に想っている源氏だったのよね。冷泉院も帝であるうちはなかなか父である源氏と会えないので、気軽に行き来ができるようにというのも譲位した理由みたいなんですって。

 




第三十八帖 鈴虫





第三十七帖 横笛


To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 雲の上を かけはなれたる 住家すみかにも 物忘れせぬ 秋の夜の月 ~

冷泉院が源氏に贈った秋の歌


~ 月影は 同じ雲井に 見えながら わが宿からの 秋ぞ変はれる ~

冷泉院を訪ねた源氏が贈った歌



◇第三十八帖【鈴虫】でした。

episode38 想いが交錯する秋の月夜   鈴虫

38.1 女三宮の憂鬱

38.2 もの想う秋の十五夜



 風流な秋の月夜に源氏の胸にはさまざまな想いがよぎります。音楽や歌のセンスのよかった亡き柏木を偲び、親子の名乗りができない冷泉帝のことを想います。もの思いにふける秋といったところでしょうか。


 お気づきだと思いますが、源氏と冷泉院、柏木と薫は同じ境遇です。実の父子だけれど公表できません。けれども源氏と冷泉院はお互い事情を知っているので態度や思いやりで「父と子」として接しています。表向きは(天皇を引退した)上皇さまと臣下という関係はありますけれどね。

 対して柏木と薫はお互いが会うことはありません。柏木が薫のことをどう思っているかは源氏が一番理解できる立場かもしれません。


 自分や柏木が犯した罪のこと、それによって生まれてきた冷泉院や薫のこと、源氏は柏木のことをどう思っているのでしょうね。


「十五夜の演出もあってしんみりしちゃうね……」


 今日はこまちちゃんもしっとりモードのようですね。

 十五夜の月明かりは源氏の心を照らしたのでしょうか。




☆こまちのおしゃべり

【別冊】源氏物語のご案内


topics31 満ちる月と欠けた心

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054885970192

同じ境遇だけれどこの二組の父子は対照的だよね……。







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episode39 堅物な浮気 不器用な本気   夕霧

39.1 夕霧の恋








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