34.7 再燃する夜? 懲りない朝……

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


~ 涙のみ せきとめがたき 清水にて 行き逢ふ道は 早く絶えにき ~

(涙だけは止められないけれど、ワタシ達の逢う道なんてもうないのよ)


 朧月夜は拒むのね。けれども、


(アナタは誰の為に失脚したのかしら。ひとりで罪を負ってくれたのにワタシったらこんなに冷たくしていいの?)


 なんて少し心が揺らいでくるの。朧月夜はもともと真面目な性格でもなく、長い年月で過去の過ちの清算をしたつもりだったんだけれど、いざ近くに懐かしい人がいると思うと強く拒絶していられなくなってくるのよね。

 そうしてふたりは再会するの。変わらずに若く美しい朧月夜に初めて会ったとき以上に源氏は盛り上がってしまうの。そのままふたりは夜を一緒に過ごしてしまうの。


 朝になっても帰りたくない源氏。朧月夜も朝日をうける源氏の美しさに見惚れちゃうの。庭には藤が咲いていて、以前密会していたころを源氏は思いだすの。


~ 沈みしも 忘れぬものを 懲りずまに 身も投げつべき 宿の藤波 ~

(須磨に謹慎に行ったことは忘れてないけど、また藤の花キミに落ちちゃいそうだよ)


 朧月夜はまた男女の関係になってしまったことを恥ずかしく思うんだけど、やっぱり源氏のことは恋しいみたいね。


~ 身を投げん 淵もまことの 淵ならで 懸けじやさらに 懲りずまの波 ~

(落ちちゃうって言っても本気じゃないんだからワタシは一緒に落ちたりしないわよ)


 こんな風に女子の家に出かけてデートするなんて若者みたいで久しぶりだったんだけど、朧月夜も変わっていなくて次の約束までして源氏は帰ったんですって。


 源氏は六条院にこっそり帰ってくるの。そんな様子を見て紫の上はやっぱり朧月夜のところに行ってたんだわって思うんだけど、気づかないフリをしているの。すると居心地の悪い源氏は馬鹿正直に朧月夜とのことを話しちゃうのよ。紫の上は新しく若い正室を迎えた上に元カノさんとも復活するなんて、わたしなんてホントにかすんじゃうわね、って泣いてしまったの。



To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 涙のみ せきとめがたき 清水にて 行き逢ふ道は 早く絶えにき ~

朧月夜が源氏に帰ってもらおうと詠んだ歌


~ 沈みしも 忘れぬものを 懲りずまに 身も投げつべき 宿の藤波 ~

一晩を過ごし朝を迎えた源氏が朧月夜に贈った後朝の歌


~ 身を投げん 淵もまことの 淵ならで 懸けじやさらに 懲りずまの波 ~

朧月夜がほんの少しの拒絶を込めて源氏に返した歌



◇「やっぱ、朧月夜さんって源氏と同じ種類の人だよね……」

 襖の鍵は外したようですね。以前帝のお妃の朧月夜と付き合っていた頃、源氏は25歳前後、現在40歳ですから15年ぶりの再会ということになります。朧月夜は以前と変わらず魅力的で若々しいのですって。


「源氏は盛り上がってるけれど、紫ちゃんがまた泣いちゃったじゃんか!!」

 若くて身分の高い正室を迎えただけでなく、独り身に戻った元カノとの復縁。紫の上の心労ははかりしれませんね。


「女三宮さんと結婚して紫ちゃんの魅力に改めて気づいたってこの前言ってたばっかじゃんか。なんでカノジョ増やしてんの?」

 女三宮との結婚も朱雀院の出家がきっかけでしたが、朧月夜が独り身に戻ったのも朱雀院が出家したからです。


「朱雀院さんの出家自体は悪くないんだろうけれど、女三宮さんとの結婚も朧月夜さんの復縁も紫ちゃんを傷つけてるよね」

「紫ちゃん、なんにも悪いことしていないのに可哀想……」


「紫ちゃんが傷ついているって、もしかしてわかっていないの? バカ源氏は」

「馬鹿正直に朧月夜さんとのことを話すってさすが源氏、バカだよね」

 こまちちゃん、「バカ」がてんこ盛りです……。





NEXT↓

34.8 紫の上の魅力



☆こまちのおしゃべり

【別冊】源氏物語のご案内だよ。元カノ朧月夜さんトピックスです。


topics25 元カノ復活の件

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054885569227

ホント、源氏と朧月夜さんって似た者同士だよね。

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