34.5 幼い女三宮

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 初めて会った女三宮は可愛らしいんだけど、ただの幼い少女だったのね。だから紫の上がますます素晴らしく思えて源氏は必死で彼女のご機嫌をとろうとするのよ。

 三晩続けて通わないといけない結婚の儀式なのに、源氏は紫の上のところから離れようとしないのね。でも紫の上はまるで自分が女三宮のところへ行けないように引き留めていると周囲に誤解されたくないから、源氏が側にいるのにも困っているの。

 そこへ女三宮から和歌が届くんだけど、なんだかすごく子供っぽいのね。


~  はかなくて うはの空にぞ 消えぬべき 風に漂ふ 春のあは雪 ~

(殿がいらっしゃらないので、春の淡雪みたいにきえちゃいそうです)


「キミは何も心配しないで、安心していていいんだからね」

 源氏は紫の上にそう言い聞かせるの。


 女三宮は身体つきや話の内容や趣味も本当に子供のままで、趣味の良い朱雀院がなんでこんな風に娘を育てたんだ? と源氏も首をかしげるの。

 そしてこうなると、源氏はたった一晩離れていても恋しくなる紫の上の魅力に気づかされるの。逢いたくてたまらない、ますます愛おしい。皮肉なことに源氏の紫の上への愛情は深まるばかりなのよね。


 姫宮のことが心配な朱雀院は紫の上に手紙を出すのね。

「未熟な娘をどうかよろしくお願いします」

 そんな内容の手紙に紫の上は恐縮しちゃうの。けれども源氏もきちんとお返事を書くようにと言うので、紫の上は心をこめてお返事をしたのね。するとそのお手紙があまりにも素晴らしいので、こんなカンペキな奥さんが側にいるんじゃ幼稚な姫宮がますます心配だって朱雀院のお悩みも深まるばかりのようなのよね。


第三十四帖 若菜上(一)


To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

 ~  はかなくて うはの空にぞ 消えぬべき 風に漂ふ 春のあは雪 ~

女三宮が訪れのない六条の院(源氏)に贈った歌



◇ここまでが第三十四帖その一です。

episode34-1 それは水紋のように……   若菜上(一)

34.1 朱雀院の悩み

34.2 女三宮の結婚

34.3 源氏の後悔

34.4 紫の上の絶望

34.5 幼い女三宮


 夕霧や明石女御が結婚して自身も出世を極めた源氏は、悠々自適のセカンドライフを送るつもりでした。そこに降ってわいた結婚話。


「子供が結婚したのに、その子供より年下と結婚するなんてね。あり得なくない?」

 この女三宮降嫁という出来事が物語の第二部で大きく大きく源氏の人生に影響していきます。一滴の滴が水紋のようにひろがっていきます。


 女三宮との結婚で紫の上の魅力を再認識するのがなんとも皮肉です。

「それまでだって紫ちゃんは理想の女性だったじゃん。最高の奥さんじゃん。それなのにまた藤壺の宮さまつながりだからって「ふたりめの紫ちゃん」を期待した源氏がバカなんだよ」

 

 幼い少女の「正室」女三宮と美しく優しく賢いカンペキ妻の紫の上の物語。ひとしずくの水紋はまだまだ広がっていくようです。



 この三十四帖【若菜上】は源氏物語オリジナルでとてもボリュームがあります。1000文字程度で区切ると10以上のセクションになるのですが、今後のカギとなるエピソードが多数登場するのでお付き合いくださいね。なるべくわかりやすくお伝えしますね。



NEXT↓

episode34-2 さざ波が揺らす心   若菜上(二)

34.6 まさかの元カノ復活?!

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