26.4 近江の君への返歌

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 この歌を受け取った女御さまはあまりの支離滅裂さにビックリ。こんなカンジにお返事しないといけないのならわたくしには書けないからと女房に代わりに返歌を書かせるの。


「これはなんとも革新的アヴァンギャルドなお手紙でございますわねぇ」

 中納言という女房が女御さまの代筆で返事を書くの。


~ 常陸ひたちなる 駿河の海の 須磨の浦に 波立ち出でよ 箱崎のまつ ~

(常陸(茨城)にある駿河(静岡)の海の須磨(兵庫)の浦にいらっしゃいな。箱崎(福岡)の松のようにお待ちしているわ)


 こんなワケのわからない歌をわたくしが詠んだと勘違いされては困るわ、と女御さまが文句を言ってしまうような和歌なのね。それでも見る人が見れば、女御さまが詠んだかどうかくらい簡単にわかるはずだからとそのまま近江の君に届けさせたの。


「うっわぁ! オッシャレーなお歌よねぇ!!」

「さすがセレブだわぁ!!! アタシのお姉さんなんてマジすごくない?!」

 受け取った近江の君は「まつ」とかいてあるから待ってくれてるんだわ! とルンルン気分で女御さまのところへ行く支度を始めるの。甘い匂いの薫香くんこう(香水)を衣装にガンガン焚きつけて、ヘアメイクもバッチリ、ド派手に決めたみたいよ。

 

 やれやれ女御さまとのご対面はどうなることかしらね。


第二十六帖 常夏


To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 常陸ひたちなる 駿河の海の 須磨の浦に 波立ち出でよ 箱崎のまつ ~

新弘徽殿女御の女房が代わりに詠んだ近江の君への返歌




◇第二十六帖常夏でした。

episode26 ふたりのムスメの明と暗?   常夏

26.1 夏の六条院 源氏と玉鬘

26.2 内大臣の悩み

26.3 異色のお姫様?

26.4 近江の君への返歌



 永遠のライバル同士の源氏と内大臣のそれぞれが引き取っている娘のお話ですね。もっとも源氏の養女の玉鬘は内大臣の娘ですが、まだ内大臣はそのことを知りません。そして今回登場する内大臣の近江の君ですが、玉鬘とは対照的に描かれていますね。無茶苦茶な和歌とお手紙でした。


「女御様の女房さんすごい! 近江ちゃんは地名3つだったけど4つ盛り込んだよ!!」

 地名の多さを競っているわけではありませんけれどね。そして当たり前ですが和歌としては破綻してしまっているので女御様はご自分の歌と思われては困るわと焦っていらっしゃいます。当時はビジネストークならぬこうした代筆のビジネス和歌も多くやりとりされたのでしょうね。むしろ女御様ご本人からのお歌の方がレアだったかもしれません。


「近江ちゃんは喜んじゃってるよ」

 一流の礼儀作法を身に着けている女御様と破天荒な近江ちゃんのご対面。見ている(読んでいる)こちらの方がドキドキしてしまいますね。


「ド派手ファッションでファンキーに登場しちゃうんだろうね。女御様ショックで倒れちゃわないかな」  

 確かに。女御様ご無事で……。

 


NEXT↓

episode27 恋の炎の行方は?   篝火

27.1 燃え上がるの? それとも鎮火?






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